午前3時のハプニング/The Golden Cups

先週末のこと。寝つきの悪い私がようやく熟睡モードに入った頃、突然、「ピンポ〜ン!」という音がした。郵便物や宅配便の配達以外の訪問者なんて、セールスか宗教勧誘しかない。それさえも、どんなに遅くても午後9時まで。そもそも、不審なものには一切出ない。
時計を見ると3時前。不安と恐怖でドキドキしてきたけれど、鳴ったのは1回きりだったので、「何も聞かなかったことにしよう。」と自分に言い聞かせ、頭から布団を被った。
ところが、まもなくどこからか「ピー、ピー、ピー」という聞き慣れないアラーム音がしてきた。さすがに、今度は火事を恐れて飛び起きた。ドアの向こうで、人声のようなものも聞こえてきた。とっさにドアを開けようとした時、隣室のドアの上で赤く点滅している警報器が鍵穴から見えた。でも、外は大雨で火の気配はまったくない。不審に思い聞き耳を立てると、女性が大声でわめきながら、部屋の中でドタバタしている様子が壁越しに伝わってきた。
隣人とはほとんど面識はないけれど、多分、60代の母親と30前後の娘の2人暮らしだと思われた。とすれば、深夜の母娘喧嘩?それにしては、騒ぎっぷりは尋常ではないし、1人の声しかしない。そもそも、警報器が点滅し続けているというのもおかしい。その前に私の部屋のチャイムを鳴らしたというのも、もしやSOSだったのかも?思案の末、警察に通報した。
警官が到着した後も、わめき声はやまなかった。自室で様子を伺っていると、警官も状況が呑み込めないまま取り調べているようだった。「保護」という言葉が聞こえてきたので、ひとまず一件落着したと解釈し、昂った気持ちを抑えながらもう1度布団に潜った。それ以上、睡眠を妨げられるのはごめんだ。しばらくウトウトしていると、またチャイムが鳴った。多分、警官による経過報告だろうと思い、あえて応対せず、そのまま寝ることにした。4時頃だったと思う。
夜が明けて、改めて警察に連絡してみると、「昨夜の件はもう解決済み。」と言うだけで、詳細については一切ノーコメント。
不思議なことに、4時頃再度チャイムを鳴らしたのは、現場を立ち去る警官だと思い込んでいたのに、そうではないという。隣人でもないらしい。新たな不安に襲われ、それなら一体誰なのかと尋ねても、「さあね。」という無責任な返事の一点張り。
口の重い警察側の少ない言葉を必死で分析し、どうにか自分なりに解釈できたのは、隣人は1人暮らしだということと、何らかの理由で錯乱状態になっていたため、一時保護されたということだけ。結局、真相は未だに深夜の闇の中。