River Of Time/Jorma Kaukonen

届いた当初はちょうど仕事の追い込みで、ざっと1回聞き流しただけのJormaの『River Of Time』を、ここ数日、何度も聴き直している。タイトル・ソングに象徴されるこのアルバムのコンセプトは、亡き祖母が夢の中に現れて語ってくれた言葉からヒントを得たものだという。老熟期に入りながらも、決して過去を振り返るだけではない彼の前向きな姿勢は、前作の延長路線とも言える。
1曲目の「Been So Long」は、38年前のHot Tunaの2ndアルバムに収められて以来、ライヴでもエレクトリックとアコースティックの両方で幾度となく演奏されている曲。ここではLarry Campbellのマンドリン(他の曲ではもっぱらBarry Mitterhoffが担当)が、一味違った味わいを添えている。Larryはこの他、ギターやフィドル、ペダル・スティール等でも参加して多彩ぶりを発揮しているだけでなく、プロデュースまで務めている。
カヴァー曲は、おなじみのRev.Gary Davisの他、Mississippi John HurtやMerle Hagggrd等、相変わらずセンスの良い選曲となっている。やや意外に思われたのは、35年以上前に亡くなった元Grateful DeadのRon ”Pigpen” McKernanによる「Operator」を取り上げているということ。あえて今これを選んだ理由を知りたい。
スタジオを提供したLevon Helmも、3曲でドラムを担当している。また、前作同様に、多くの人々に対する謝辞が述べられている中に、今回もまた、<a href="http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=435022&log=20050606">故Ian Buchanan</a>の名前も見られる。JormaがRev. Gary Davisの曲を取り上げる限り、その魅力を教えてくれた旧友Ianを無視することができないということなのだろう。
その一方で、親馬鹿(?)ぶりもエスカレートするばかり。すでに小学5年生になった息子Zachがいるのに、2年前に香港から養女を連れてきてIzzeと名付けている。血は繋がっていないのに溺愛ぶりは相当なもので、彼女への曲が2曲も収められている(「Izze's Lullaby」と「Simpler Than I Thought」)。子供のいない私には、ちょっと理解しがたい。とはいえ、幼い2人の存在のおかげで、彼の現在の生活がより一層満たされているのだと思うと、感謝しなければ・・・。
ところで、今回のレコーディングの大半で用いたのは、56年製のギブソンJ-50だという。あの名曲「Embryonic Journey」を生み出したギターであり、Janis Joplinと一緒に演っていた頃から半世紀にわたってずっと愛用し続けているというけれど、裏ジャケットの写真を見る限り、まったく古さは感じられない。

午前3時のハプニング/The Golden Cups

先週末のこと。寝つきの悪い私がようやく熟睡モードに入った頃、突然、「ピンポ〜ン!」という音がした。郵便物や宅配便の配達以外の訪問者なんて、セールスか宗教勧誘しかない。それさえも、どんなに遅くても午後9時まで。そもそも、不審なものには一切出ない。
時計を見ると3時前。不安と恐怖でドキドキしてきたけれど、鳴ったのは1回きりだったので、「何も聞かなかったことにしよう。」と自分に言い聞かせ、頭から布団を被った。
ところが、まもなくどこからか「ピー、ピー、ピー」という聞き慣れないアラーム音がしてきた。さすがに、今度は火事を恐れて飛び起きた。ドアの向こうで、人声のようなものも聞こえてきた。とっさにドアを開けようとした時、隣室のドアの上で赤く点滅している警報器が鍵穴から見えた。でも、外は大雨で火の気配はまったくない。不審に思い聞き耳を立てると、女性が大声でわめきながら、部屋の中でドタバタしている様子が壁越しに伝わってきた。
隣人とはほとんど面識はないけれど、多分、60代の母親と30前後の娘の2人暮らしだと思われた。とすれば、深夜の母娘喧嘩?それにしては、騒ぎっぷりは尋常ではないし、1人の声しかしない。そもそも、警報器が点滅し続けているというのもおかしい。その前に私の部屋のチャイムを鳴らしたというのも、もしやSOSだったのかも?思案の末、警察に通報した。
警官が到着した後も、わめき声はやまなかった。自室で様子を伺っていると、警官も状況が呑み込めないまま取り調べているようだった。「保護」という言葉が聞こえてきたので、ひとまず一件落着したと解釈し、昂った気持ちを抑えながらもう1度布団に潜った。それ以上、睡眠を妨げられるのはごめんだ。しばらくウトウトしていると、またチャイムが鳴った。多分、警官による経過報告だろうと思い、あえて応対せず、そのまま寝ることにした。4時頃だったと思う。
夜が明けて、改めて警察に連絡してみると、「昨夜の件はもう解決済み。」と言うだけで、詳細については一切ノーコメント。
不思議なことに、4時頃再度チャイムを鳴らしたのは、現場を立ち去る警官だと思い込んでいたのに、そうではないという。隣人でもないらしい。新たな不安に襲われ、それなら一体誰なのかと尋ねても、「さあね。」という無責任な返事の一点張り。
口の重い警察側の少ない言葉を必死で分析し、どうにか自分なりに解釈できたのは、隣人は1人暮らしだということと、何らかの理由で錯乱状態になっていたため、一時保護されたということだけ。結局、真相は未だに深夜の闇の中。

Your Time Will Come/Quicksilver M. Service

今や音楽情報にすっかり疎くなっている私に、ネット・ショップから届く新作発売情報はありがたい。Jormaのニュー・アルバムが来月発売されることも、昨日初めて知って早速予約した。以前は、更新毎に必ず閲覧していた彼のブログも、昨年、3ヶ月近くPCが使えなくなっていたことも影響して、長らくご無沙汰していたため、レコーディングしていたことすら、まったく知らずにいた。現時点でわかるのは、Levon Helm(!)のスタジオでレコーディングしたということと、Levon自身もドラムで参加していること、そしてRev. Gary Davisをはじめ、長年にわたってJormaが敬愛する人達のカヴァー曲が含まれていることぐらい。タイトルは『River Of Time』で、2年前に出た<a href="http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=435022&log=20070319">『Stars In My Crown』</a>と同じレッドハウス・レーベルから発売されるという。いかにもJormaが好みそうなタイトルを見ただけで、どんな内容のアルバムなのか、それとなく察しがつく。
そう思っていた矢先、1/7付けの彼のブログで、父親の命日を前にして、その想いを語っている中で、「The river of time continues to embrace me」という一節を見つけた。こんな詩的な表現(そういえば、Led Zeppelinの「The Battle Of Evermore」の♪The beads of time pass slow♪というフレーズも大好きだった)を眼にすると、また改めて、彼のブログを読み続けたくなる。
Jormaといえば、ティーンエイジャーの頃の私の「心のふるさと」が、ロンドンからベイエリアに変わるきっかけとなった『Fillmore:The Last Days』の映像が、この春ようやくDVD化されることになった。非公式のvideoは持っているけれど、長年待ちわびた公式版が出るとなると、入手せずにはいられない。何しろ、この映画で私はJormaに「一『耳』惚れ」したのだから・・・。
同様に、ドイツの音楽番組『Rockpalast』に出演した時のJorma & Vital Partsと、Gravenites & Cipollina BandのDVDも出るという。これらの非公式映像もすでに手元にあるとはいえ、結局、買い直してしまうんだろうな。
一方、新作といえば、Jormaだけでなく、ResentmentsやGurf Morlix、J.J.Caleなどのアルバムも出るらしい。幸い、円高のせいでかなり安く手に入るとはいえ、「万年ビンボー」の私には、うれしくも厳しい春先となりそう。
さて、「time」つながりのタイトル・ソングは、昨年末にドサっとまとめて発売された(けれど、特に目新しいものはない)QMSの公式ライヴ盤より。

Pale September/Fiona Apple

今年2度目の日記を書くのが今頃だなんて、あきれて笑うしかない。
今日は4年前に亡くなった父の命日だった。仕事はほとんど終わっていたけれど、帰省もせず、時折、ぼんやりと回想するだけにした。そして、夏の初めに帰省した時のことを、ふと思い出した。
遺品の本の山の中に、今まで気付かなかった映画のパンフレットが数十冊紛れ込んでいた。子供の頃から大の洋画好きだった父が、パンフレットを集めていても、たいして驚くことではない。しかも、見つかったのは、ここ20年以内の比較的新しい作品ばかりなので、やや落胆さえした。好きなジャンルは、歴史スペクタクル、戦争物、SF、ホラー&サスペンスetc.が中心で、残っていたパンフレットも、ほとんどその類だった。そんな中、1冊だけサイズが小さいために、かえって目立つものがあった。そのタイトルも、周囲から浮いていた。『サマーストーリー』という、陳腐なメロドラマ風タイトルが、父の趣味に合っているとは決して思えなかった。その存在理由を確かめるため、思わず手に取ると、表紙には、イギリスの田園風景と、20世紀初頭のレトロな衣装をまとった男女が写っていた。それで全ては読めた。確信と共にページをめくると、予想通り、それはイギリス人作家John Galsworthyの『The Apple Tree』を映画化したものだった。
Galsworthyといえば、一見、父(=酔っ払うと、Edgar A.Poeの「The Raven」を原文で大声で唱えだすような人)の好みから外れたタイプの作家に思われるけれど、少なくとも、『The Apple Tree』に対しては、相当な愛着を持っていたようだった。
子供の頃、新潮文庫の邦訳『林檎の樹』が本棚の片隅にあったことを覚えているし、高校生になったばかりの私に、「短編で読みやすいから読んでみなさい。」と言って、その原書を手渡してくれたのも父だった。ところが、私といえば、その内容にまったく感情移入ができない上、曖昧な文学的表現の多い英文を訳すのが面倒で、読むのを途中で挫折してしまった。それでも、そのタイトルだけは、ずっと記憶に残っていた。そして、今頃こんな形で再会することになったのだから、思わず涙ぐんでしまったのも当前だろう。
それにしても、父はこれが映画化されたことを、どうやって知ったのだろう。それに、全国公開されるような娯楽大作や話題作ではないので、もしかすると、わざわざ遠くのミニシアターまで足を運んだのかもしれない。それほどまでに、この作品に魅せられた理由を知りたいけれど、今さら父に確かめることもできない。

Party Girls & Broken Poets/Elliott Murphy

気まぐれな天気の1日だった。最高気温は午前2時頃の6.6℃で、夕方6時半にはすでに0.9℃まで下がっていた。雪は朝からずっと降っているけれど、ふわふわとしたぼたん雪のため、少しも積もらない。何の気力も失せるほど寒い日が続いているのだから、せめて積もって、眼だけでも楽しませてほしい。
そんな時、ヨーロッパのコアなElliott Murphyファンから、You Tubeに古いライヴ映像がアップされたという知らせがあった。なんと、81年にスウェーデンの音楽番組に出演した時のものだった。
関連映像をチェックしていると、「Cheap Trick Party1978」というタイトルを発見!「一体どうして、Cheap TrickのパーティにEMが?」といぶかりながら、30分にもおよぶその映像を見始めた。
78年といえば、当時、本国ではまだほとんど無名同然のCheap Trickが初来日し、武道館ライヴを皮切りに、異常なまでのブームを巻き起こした時期と重なる。映像は、その帰国後に行なわれた凱旋記念パーティの様子だった。全編にわたって、Susan Blondという女性(その名に反し、ブロンドではなく黒髪)がインタヴューを仕切っている。どこかで見たような顔だけれど、名前を認識したのはこれが初めてだった。メディア界では有名な人らしく、そのざっくばらんな様子は、見ていて気持ちが良い。
Cheap Trickは、一癖も二癖もありそうなコメディアン風容貌の2人と、ブロンドとブルーネットのきれいどころ(?)が2人という異色の4人組で、日本で大受けしたのには、単に音楽面だけでなく、そのヴィジュアル面も大きく影響していたと思う。でも、私はさほど興味がなかったので、今回の映像も、EMの出番だけが気になった。なのに、わずか1分ほどの出演だなんて・・・。
Susanは、EMだけでなく、パーティの雑踏の中で見つけたゲスト陣に、次々にマイクを向けていた。David JohansenやJohn Cale、さらにはLinda Blairまで。Lindaといえば、その数年前に『エクソシスト(The Exorcist)』で一躍有名になっていたけれど、当時から多くのミュージシャンとの交流が噂されていた(『ML』誌に、Lynyrd SkynyrdのGary RossingtonとAllen Collinsに囲まれているモノクロ・グラヴィアを見てうらやましく思ったのを記憶している)。この時も、ハイテンションではしゃぎまくっていた。
30年も前のこんな映像が今頃見られ、しかも、その中にEMの姿まであるなんて、ありがたい以外の何ものでもない。さらに、その2年前にSusanがEMに独占長編インタヴューを敢行している映像まで見つけ、しばし、それに見入ってしまった。

Living In The Moment/Jorma Kaukonen

今日はJormaの67回目のバースデイ。あえてこうして日記に取り上げるのは、意外や意外、<a href="http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=435022&log=20041223">3年ぶり</a>!
以前は、更新されるたびに欠かさず読んでいた彼のオンライン日記も、最近は、忙しさにかまけて、時々ざっとまとめて眼を通すだけになっている。
その内容は、春に出たニュー・アルバムさながら、ますます内省的なものとなる一方で、数年前に発覚した隠し子Zack(10歳)との対面が引き金となり、それまで潜んでいた父性に目覚めたらしく、遂に今年、香港から1歳半の養女まで引き取って、せっせと子育てに励む様子も書かれている。さすがにこれは、母性本能というものをまるで持ち合せていない私の理解の範疇を超えている。
それはさておき、そのニュー・アルバムが届いた時に書いた自分の日記を、改めて読み返してみた。珍しく、<a href="http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=435022&log=20070319">1日</a>では書ききれず、<a href="http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=435022&log=20070320">2日</a>にわたって書いている。
毎年この時期になると、音楽ファンの多くは、その年に出たアルバムの中からBest10を選んだりしている。でも、昔も今も、感覚だけを頼りに音楽を聴いている私には、まじめな分析や的確なレヴューは一切無理だとわかっているので、あえて試みたことはない。
そもそも、今年下半期のアルバムは、仕事に追われていたせいで、まだほとんど手に入れていないのだし(かろうじて、Levon Helmのみ入手済みなのは、早くから予約しておいたおかげ)。そこで、あえて上半期のラインナップから、お気に入りを選ぶとすれば、当然、上述のJormaの『Stars In My Crown』が入る。そして、それ以上に聴き込んだのがGurf Morlixの『Diamonds To Dust』。タイミング良く初来日も果たし、素晴らしいステージを披露してくれたので、しばらくの間、Gurf熱に浮かされるほどだった。
2人共、アルバムの中で「生」や「死」を取り上げているせいか、それを聴く私までシリアスな気持ちにならざるを得なかった。考えてみると、彼らより少し前に出たElliott Murphyの『Coming Home Again』にも、よく似たものが感じられた。尤も、彼らに限らず、歳を重ね身内や仲間を何人も失くしてきたミュージシャンなら誰でも、多かれ少なかれ、似たようなテーマを取り上げたくなるのだろうけど。そういえば、Eric Andersenも、2000年以後、その傾向が強いアルバムを立て続けに数枚出していたっけな。

Revolver/Isobel Campbell & Mark Lanegan

珍しく寝汗をかいてしまい、6時半頃眼が覚めた。寒い日が続いていたので、重装備で寝ていたのが仇になったようだ。後で気温を調べたら、早朝でも8℃を超えていたらしい。それなのに、日中になっても、気温は横這い状態のままだった。雨も降っていたので、結局、1歩も外に出なかった。いや、厳密には、「たとえ出たくても出られなかった」と言うべきだろうか。昨夜見た某ドラマの最終回の思いがけない展開に号泣し、終わった後も数時間泣き続けたせいで、一夜明けると、すっかり眼がふやけきっていたから・・・。こんなことは珍しい。前にこんなに泣きはらしたのは、一体いつのことだったのか、さっぱり思い出せない。
そんな中、ふと考えてみると、京都に引越してきて、今日でちょうど2年になる。2年前の今日は例年にない大雪で、高速道路も閉鎖され、午前中に出た2台のトラックが新居に着いた時には、すっかり陽が沈んでいた。その上、1日で荷物を運びきれず、残った分を後日、運び直さなければならないという、信じられない事態に陥った。
それからもう2年になるのに、まだ新参者の気分でいる。運んできた荷物の半分以上が未整理のままという、シャレにならない状態も続いている。それでも、色々な意味でゴタついていた引越し前の数年間に比べると、今はずいぶんすっきりしたと言える。
そんなゴタゴタした数年間のどさくさに紛れて、ずっとご無沙汰していた、まだ見ぬスコットランドの友からCDが届いた。1枚はセンスの良いスペシャル・セレクションで、もう1枚は、Isobel Campbellというスコットランドのシンガーと、Mark Laneganというアメリカ人ミュージシャンによる異色(?)のコラボ・アルバムで、『Ballad Of The Broken Seas』というものだった。いずれの名も、初めて耳にするものだったけれど、声フェチの私のツボを、よくもまあここまでうまく押さえてくれたものだと感心するほど、すっかりこの2人に参ってしまった。か細く、囁くようなヴォーカルが魅力的なIsobelのソロ・アルバムもすでに手に入れたし、重苦しいヴォーカルのMarkが、80〜90年代に、Screaming Treesというグランジ系のバンドに在籍していたということを知ると、そちらも早速チェックした。
こんな風にして新しいお気に入りが見つかるのは、今年の夏、ひょんなことから、<a href="http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=435022&log=20070801">Band Of HeathensやColin Brooks</a>の存在を知った時以来だろうか。こんなうれしいハプニングなら、来年になっても、何度でも大歓迎!