The Letter/Joe Cocker

かつて、月曜日といえば2日分まとめて手紙が配達されるので、郵便受けを開けるのが楽しみだった。でも、今日届いたのは、クレディット・カードの明細書とバーゲンのお知らせだけ。今はほとんどこのパターンばかり。よく考えると、今年、年賀状や季節の挨拶を除き、知人から封書が届いたのは、たった数回だけだった。もうそろそろ1年も終わりだというのに。Eメイルの力は何とすごいんだろう。
それに比べ、中・高校、さらには大学時代さえ、手紙に大いに頼っていた。何しろ、同じような趣味の友人を探すこと自体、なかなか困難なことだったから。幸い中学時代は、映画好きの仲間が3人いて、それぞれ音楽も好きだったので、よく行動を共にしていた。そのため、当時の文通相手は、もっぱら海外の子だった。多い時で10人近くと、同時にやりとりしていた。問題は高校生になってから。中学時代の友人は全員、別の高校に行ったので、共通の趣味を語れる友が皆無になった(2年生になって同じクラスに、ロック・ファンのキュートな女の子を見つけるまでは)。そうなると、頼るのは音楽雑誌の文通コーナー。男の子と文通すると、絶対に父がうるさく言うに決まっていたので、相手は同年代の女の子。話し相手に飢えていたので、ここぞとばかりはり切って、便箋にびっしり10枚ぐらい書くことさえザラだった。上京してからは、その何人かと会ってみたりした。ちょっと年上のお姉さんには何かとお世話になった。
文通コーナーではなく、「譲って下さい」コーナーで、不思議な出会いもあった。Zeppelinの来日特集号を望んでいる人がいたので、同じようにその本を探し続けていた私は、即、彼女に連絡した。「もし、複数の方から譲りますという申し出があれば、私に1人紹介して下さい!」という、実にズーズーしいお願いだった。返事は来たけれど、残念ながら複数の申し出はなかったようだ。ところが、その後1年ぐらいたって、その子から突然、手紙が届いた。「以前、Zepの本のことでお手紙頂いた者ですが、覚えてますか?何となく気が向いてお便りしてみました。実はあれから、趣味が変わって、今一番好きなのはHot Tunaです。特にJack Casadyに夢中です。」というような内容だった。私も、ちょうどその少し前に、シスコに心が飛んでしまったばかりだったので、その出来すぎたような偶然に驚くしかなかった。しかも、彼女は私の大学の1年後輩となった。作り話みたいだ。