C'est Pas d'Ma Faute/Clare Muldaur

直前まで決めかねていたClare Muldaurのライヴを、結局、見に行くことにした。電話予約しておけばテーブルを確保でき、万一のドタキャンも可とのことで気が楽だった。でも、開場20分ぐらい前に到着したのに、先に並んでいたのは1組だけ。ある程度予想していたものの、こんなのは初めてだ。
主催者のIさんと初めて対面し、ちょっとご挨拶してから入場した。Iさんは広島在住で、まだ30代半ばぐらいの若さなのに、日本であまり知られていないミュージシャンを紹介することに力を尽くしている。今回、その奮闘ぶりを直に拝見して、思わず頭が下がった。
さて、店内に入ると、そのこじんまりとした様子に驚いた。普段はペルー料理のお店で、全席が埋まってもせいぜい30名も入るだろうか(後で聞いたら27名だったという)。私のテーブルの眼の前にマイク・スタンドがセットされていて、その距離わずか2mほど。よく考えると、もっと近くでJormaのライヴを見たこともあるけれど、今回は段差がないのでより近く感じる。
Clareと、ダンナであり音楽パートナーであるOlivier Manchon(名前通りフランス人)は、お客と同じ正面ドアから入ってきた。しかも、Olivierはバックパックを背負っている。こんなリラックス・ムードも珍しい。でも、入場後すぐに注文したはずの料理がやっと運ばれてきたのは、8時の開演とほぼ同時だなんてあんまりだ。今から歌い始める人を眼の前にして、平気でムシャムシャ食べられるほどの図太い神経を、私は持ち合わせていない。お茶目なClareは、「さっきまで大阪城公園を走り回ってたの。あちこちからいい匂いがしてくるのは、お腹がペコペコの私には酷だわ」なんて言うので、ますます気がひける。結局、曲の合い間に少しずつ食べなきゃならなかったので、すっかり冷めきってしまった。食べ物の恨みは怖いよ。
ライヴは、休憩を挟んで2セット行なわれるというので驚いた。実に気前が良い。ただし、いきなりOlivierのヴァイオリンの弦が切れたため、最初のセットでは、ギターやピアニカ、さらには鉄琴(のようなもの)を使う曲が中心となった。私がCDを聴いて一耳(!)惚れしたClareのスウィート・ヴォイスは、生で聴くと意外に芯がしっかりしてパワフルだった。また、期待していたオールド・タイミーなムードもそれほど味わえず、この点については少しばかり残念。ただし、一般的な意見は私とは正反対で、CDより生の方が好まれたもよう。私も特別不満だったわけではない。だけど、できればもっともっと甘い歌声が聴きたかった。