Go Home Blues/Mill Valley Bunch

去年亡くなった2人の伯母の家の後片付けがまだ終わっていず、今日からまたお手伝いすることになった。久しぶりにハイウェイ・バスを利用したので、車中から思う存分お花見ができた。こんな季節にはバスの旅もいい。その間ずっと聴いていたのはHot Tunaの89年エレクトリック・ライヴ。CD2枚を聴き終えた頃、ちょうど実家に到着し、食事を終えてから伯母の家に向かった。今回はてっきり、屋根裏部屋の探索だと思い、ワクワクしていたのだが、あいにくそれはまだ先のこと。まずは押入れの中の整理の続きからだった。
6人姉弟の長女と次女の伯母たちは、末っ子の父よりずいぶん年上なのだが、不思議な人たちだった。結婚もせず、仕事にも就かず、2人っきり(父以外の弟妹は、全員若くして病死)で早くから隠遁生活を続けていた。戦前から洋画が大好きで、夢見がちでかわいらしい文学少女のまま一生を終えてしまった。
中学生の頃、2人から聞かされたおもしろいエピソードがある。第二次世界大戦中、伯母の地元にもアメリカ人捕虜が何人か収容されていたという。Gary Cooperのような人がゴロゴロいるという噂を耳にして、こっそり見に行ったらしい。ところが、お目当てのGary Cooperもどきは1人もいなくて、すごすごと引き返したという。伯母いわく「美形の捕虜なんて、都会にしかいないと思った」。このエピソードを聞いて、この伯母にして、この私あり!と痛感した。そういうミーハー共通項を彼女たちも感じ取っていたせいか、私たち3姉弟の中でも、特に私をかわいがってくれた。
そして、押入れや箪笥の整理をしてさらに驚いたのは、洋服の色やデザインに対する好みがあまりにも私と似通っていること。とても90歳近い人が着るとは思えないような、かわいらしいデザインや、きれいな色調のものがたくさん並んでいたのだから。ますます親しみを感じ、アメリカで買っておいた戦前の映画の写真集を、仏壇にお供えした。きっと喜んでくれるはず。
なお、タイトル・ソングは、ベイエリアのミュージシャンによる72年のセッション・アルバムから。ミル・ヴァリーの地名が入っているのに、Nicky HopkinsやJohn Cipollinaが参加していないのはちょっと残念!