廃墟の鳩(A White Dove)/The Tigers

祖父母の法要で京都のお寺に行った。といっても、この日が命日ではなく、毎年、4月上旬に、全国各地から多くの檀家が広いお堂に集まり、一斉に行なわれる合同法要に参加するだけのことだ。例年は、両親のいずれかが単独参加していたが、今年は、私がピンチヒッターを務めることになった。まあ、春の京都も悪くはないし、京都に行っても、お寺にまで足を延ばすことはめったにないので、たまにはいいだろうと快く引き受けた。
いつもより早起きして電車に乗り継ぎ、やっと着いたと思ったら、開始時間ギリギリ。それでも、私の後から続々とやって来る。観光気分の人も少なくないようだ。その証拠に、カメラ片手に、カジュアルないでたちや、カラフルないでたちの人が目立つ。私も似たようなものだけど。
この時期の京都の季候は直前まで予想がつかない。両親の話では、コートを着て震えていた年もあるという。ところがこの日は夏日だった。念のため持ってきたスプリング・コートの出番さえない。日頃の行ないの良さが、こんなところで物を言うのかもしれないな。
退屈するほど長くもない読経と説法が終わると、お待ちかねの精進料理タイム。ごはんと白味噌のお味噌汁、大きな飛竜頭、ふきと高野豆腐と牛蒡の煮付け、それにこんぶと沢庵という質素なものだが、激辛系やクセのあるエスニック料理だけでなく、こういうあっさり系のメニューにも目がない私は、あっという間にたいらげてしまった。周囲を見回すと、携帯電話のカメラで、お料理を撮っている人もいる。そういう人たちを尻目に、私はさっさと席を立った。目的さえ果たせば、それ以上そこにいる必要もないのだから。
時計を見るとまだ12時半。せっかく早起きしてやって来たのに、そのままあっさり帰るほど馬鹿ではない。京都といえば、妹が学生時代に住んでいた頃、よく押しかけ、2人であちこちうろついたので土地勘もある。このお寺があるのは、右京区のはずれの方だが、近くには太秦映画村があることもちゃんと知っている。今さらそんな所に行く気もしないけどね。それじゃ、どうしたものか?とりあえず地下鉄の駅に辿りつかなくては。
結局、家に戻ったのは夜の12時前だった。ずいぶん長い間、地下鉄に乗っていたみたい。
お寺といえば鳩が定番なので、こんなタイトル・ソングを選んだけれど、廃墟というのは失礼?タイガースとは、もちろん京都出身のGSのこと。