Magic Bus/The Who

夕方、またハイウェイ・バスに乗って帰路についた。乗客はわずか10人ぐらいなのに、私に割り当てられたのは最後尾の席。やたらと揺れて気分が悪い。軽度とはいえ、乗り物酔いしたのは何年ぶりだろう。その上、西日が射すのでカーテンを閉め切り、往路のように車中からお花見を楽しむこともできない。そういえば、子供の頃は車が大のニガテだった。かろうじて電車には乗れたけれど、車関係は全滅だった。それでも、車中の苦しみより、どこかに出かけるという楽しみの方が大きかったので、遠足の前の日はワクワクしたものだった。乗り物酔いがほぼ克服できたのは、アメリカに滞在中だったと思う。渋滞のない直線道路を、日本の何倍ものスピードで走る快感は、たちまち病みつきとなった。といっても、未だに免許を持っていない私は、いつも、ボスやその家族、友人たちに便乗していたのだけれど。そうするうちに、いつのまにか鍛えられて、日本に帰国後、渋滞とカーブだらけの道を一番ニガテなタクシーで走っても、何とか耐えられるようになっていた。それなのに、今頃バスで気分が悪くなるなんて・・・。
そこで苦し紛れに選んだのはThe Whoの曲。長年にわたり「来日していない最後の大物」とされていた彼らだが、この夏、ついにやって来るらしい。でも、単独公演ではなく、大がかりなロック・フェスティヴァルに参加とのこと。確かに、The Whoといえば、モンタレー・ポップや、ウッドストック、ワイト島ライヴなど、ロック史上に残る巨大フェスティヴァルでのステージが印象深いが、熱烈なファンたちは、本当はどちらの形式で見たいのだろうか?そういえば、彼らのロック・オペラ『トミー(Tommy)』は、学生時代『ファントム・オブ・パラダイス(Phantom Of The Paradise)』と2本立てで見たが、部厚くこってりしたステーキを、2枚食べさせられたような気分になった記憶がある。モンタレーやウッドストックでのステージは、気に入っていたのだけれどね。それから、もう10数年以上前になると思うが、たまたま教育TVで見ていたShakespeareの『お気に召すまま(As You Like It)』に、Roger Daltreyが乞食役で登場し、あまりの意外さに驚いたものだ。このエピソードは、ファンの間ではよく知られていることなのだろうか?ちょっと気になる。