Carmelita/Warren Zevon

ヒマ潰しにソリティアをしていたら、タイトル・ソングの♪I'm sittin' here playing solitaire with my pearl-handled deck♪という一節が浮かんできた。でも、WZの言う「ソリティア」が、気楽なトランプ・ゲームのことかどうか定かではない。私はバイリンガルでもないし、スラングに詳しくもない。「deck」には「トランプ一式」の意味もあるので、文字通りソリティアをしていると解釈するのが妥当なのだろう。でも、「pearl-handled deck」が、何の根拠もなく「真珠(色)の取っ手のついた銃」のような気がしてならない。そして、それを頭に当てて自殺ごっこのようなことをしている男(WZ自身?)の姿が目に浮かぶ。勝手な妄想だ。
全体を通じ、この曲の歌詞はとてもヘヴィ。いきなり「ノイズだらけのマリアッチがラジオから流れて」きて、「暗闇の中でTVの画面が光っている」という情景描写。それだけで侘しさがにじみ出ている。そして、ヘロインの常用でボロボロになった男が、町外れで崩れ落ちそうになり、Carmelitaに「しっかり抱きしめてくれ!」と訴えかける。「メタドン(ヘロイン中毒の治療に用いる薬)が支給されなくなり」、「生活保護も削られる」という。やむをえず、「Smith Corona(タイプライターの有名なブランド)を質に入れ」て、「ヤクの売人に会いに行く」。多分、この男は、元はしがない物書きだったのだろう。その商売道具を質に入れなければならないほど、クスリに溺れているというわけだ。あまりにもやるせない。売人がたむろする場所が、「Alvarado通りのパイオニア・チキンの売店のそば」と特定されている。固有名詞が出ると、一層リアルさが増す(「パイオニア・チキン」は架空のお店らしいけれど)。ついでながら、Lindaヴァージョンでは、質に入れるのはタイプライターではなく「Smith & Wesson(銃)」となっている。これは、どう見ても彼女が物書きタイプには見えないからだろう。
話は変わるが、WZの最初の奥さん、Tule Livingston Dillowが今年3月3日に乳癌で亡くなったらしい。今頃知って驚いたけれど、彼女はJordan Zevonの母親でもあり写真家だった。つまり、Jordanはわずか半年の間に両親を亡くしたことになる。さらに驚いたのは、彼女は去年出たLyme & Cybelle時代の音源を集めたアルバム『First Sessions』で、WZとデュオを組んでいたViolet Santangeloと同一人物だということ。ライナーノーツには「後に、ブロードウェイのスターLaura Kenyonとなった」としか書かれていなかったのに。3つの名を持つ多才な女性だったのか。