That Smell/Lynyrd Skynyrd

私には幻覚や幻聴の経験はほとんどないけれど、幻嗅(それとも幻香?幻匂?)はよくある。明らかに誰も居ないし、入ってきたこともないはずの自宅で、自分以外の誰かの香りがする。しかも、香水や化粧品のような合成の香りではなく、明らかに人の匂い。かといって、着ている物や身体に誰かの香りが染み付いている、というわけでもない。シャワーを浴びて、洗濯したばかりの衣類を見に着けた時にさえ、そう感じることが多いのだから、本当に不思議だ。でも、そのようなことが頻繁に起こる。今現在もそう。もしこれが不快な臭いなら大迷惑だが、その逆なので、「匂いフェチ」でもある私はドキドキしてしまう。我ながら、ちょっとヘンだと思う。
そんなわけで、一昨日に引き続き、またもやLynyrd Skynyrdの曲を借りた。ここで歌われる「That Smell」とは、明らかにドラッグの匂いのことで、私の言う匂いとは大違い。でも、ジャンキーを戒める内容なので救われる。
ところで、「あの時、ライヴを見に行っておけば・・・」と後悔するバンドはそれほど多くないけれど、LSはその数少ない1つ。初来日からそう時間を置かずにあの悲劇が起こり、「後悔先に立たず」を身をもって味わったはずなのに、その数年後、再び同じようなミスを犯してしまった。LSの残党、Rossington-Collins Bandのライヴを、「会場までの交通手段が確保できない」という、一見単純そうで実は厄介な問題のせいで、見逃してしまったのだ。今にして思えば、交通手段ぐらいどうにかすべきだったと後悔するばかりだ。Allen Collinsにはもう2度と会えないのだから。
さて、LSといえば、北朝鮮拉致事件被害者の蓮池さんのことがすぐに浮かんでくる。私とほぼ同年代の蓮池さんは、一昨年帰国した時、好きなバンドとしてLSやEagles、The Bandなどを挙げていたので驚くと同時に、共通の仲間意識が働き、失礼ながら他の被害者の方以上に親近感を抱いてしまった。今回、蓮池さんと地村さんご夫婦が、ようやくお子さんたちを連れ戻すことができたのはひとまず喜ばしい。でも、今後の見通しや、他の被害者家族の状況を考えると、手放しで大喜びというわけにはいかない。この問題はあまりにも根が深すぎて、狭いスペースで語り尽くせるわけがないけれど、何家族ものみなさんの運命が、独裁国家の手によって何十年も翻弄され続けているなんて、あまりにも痛ましいし、深い怒りを覚えずにはいられない。