Fresh Air/Quicksilver Messenger Service

日没の時間がだんだん遅くなっている。7時頃家に向かっていたら、西の方の空がギラギラと輝いていた。海の近くに住んでいると、季節ごとに特徴のある夕陽が見られる。真冬にはThe Band『Islands』のジャケットそっくりの、ブルーとオレンジのコントラストが見事な夕空が見られる。そして今日は、制作工程でまだドロドロの状態のべネチアン・ガラスか、はたまた火山から流れ出す溶岩のように、ヤケドしそうに濃厚なオレンジ色だった。柑橘系の果物は大好きなくせに、オレンジ系の色は大嫌い(でも赤や紅系は大好き!この違い、わかってほしい)で、着る物はおろか小物にも一切使わない私でさえ、この時ばかりはしばらく見惚れていた。そして、ザ・スパイダースの「夕陽が泣いている」がふと浮かんできた。そういえば、ネット・デビューしたばかりの頃、QMSについて語り合われる貴重な日本語サイトで、おもしろい話題を見つけた。「夕陽が泣いている」と「Fresh Air」の出だしの部分がよく似ているというのだ。日本の曲によくあるように、パクリ疑惑さえ出ていたけれど、幸いその疑いは晴れたようだ。何しろ、作られたのは「Fresh Air」の方がずっと後だし。似ているのは出だしだけなので、ただの偶然にすぎないのだろう。
QMSを初めて聴いたのはHot Tunaと同じく『フィルモア最后のコンサート(Fillmore The Last Days) 』でだった。これまでいたるところで、何度となく繰り返してきたが、(一部の例外を除き)ブリティッシュ・ロック一辺倒で、アメリカン・ロック、特にウエスト・コースト系を「軽い」と決めつけて聴かず嫌いだった愚かな私は、このドキュメンタリー映画によってようやく開眼した。もし、これを見ていなければ、今もなお先入観と偏見だらけの聴き方を続けていたかもしれない、と思うとゾッとする。
ひとくちにQMSと言っても、時期やメンバーの入れ替わりによって、音の感じはずいぶん違う。一番有名なのは、この「Fresh Air」だろう。確かに、1回聴いただけで耳に残るインパクトがある。しかも私の場合、いきなり映像付きだったので一層強烈だった。一緒に演奏された「Mojo」も然り。とりたてて好みでもないはずのDino Valentiが、妙にセクシーに見えてたまらなかった。でも、結局、行き着いたのは初期の2枚だ。QMSのもう1つのお目当てといえるNicky Hopkinsがまだ参加していなくても、私が選ぶのは1stと2nd。これは永久に変わらない。