Ride A White Swan/T.Rex

また窓を開けて寝たら、今朝は蝉ではなく鳩に起こされた。低音でしつこく「クゥクゥ」と鳴かれると、ずいぶん耳障りだ。数年前には、ベランダに巣を作っていたこともある。普段使うのは南側のベランダだけで、北側はエアコン室外機を置く他は、扉を開けることさえめったにないので、いつのまにか棲みついていたようだ。木の枝を集めて作られた巣を見つけた時は、ビックリしてホウキと塵取りで取り除いた。でも、何度片付けても、そのたびに、新たな枝が運ばれてきた。手すりにテグスを張ったり、吹流しをつけたり、いらなくなったCDを吊るしたり、芳香剤を置いたりetc.と、さまざまな撃退法を試してみたけれど、全てムダだった。そんなある日、卵まで発見し、困り果てた。いくらなんでも、それを捨てるほどの非情さを持ち合わせてはいないので、やむなく、ヒナが返るまで「立ち退き命令」を保留することにした。そんな中、3日ほど留守にして帰宅すると、とんでもないことになっていた。親鳩の姿は見えず、俄仕立ての巣の中に、卵が1つ放置されたままになっていたのだから。1週間経ってもそのままなので、心を鬼にして取り除いた。真夏の炎天下で、卵に異変が生じていたらしく、まるで中味が何も入っていないかのように、カラカラと音を立てて転げた。気味が悪いけれど、そのままゴミ袋に詰めて捨て、それで一見落着・・・のはずだった。ところが、本当の恐怖はここから。さらに1週間ほど過ぎたある日、再びあのイヤな鳴き声がするので、ベランダのガラス戸を開けてみると、親鳩が舞い戻ってきていた。しかも、いつもと違い、ドアを開けても逃げようとしない。それどころか、私に背中を向けていたその鳩が、いきなり肩越しに首をこちらの方に回した。まるで「卵を返せ!」とガンを飛ばしているかのように。鳩に睨まれるなんて初めてだった。幸い、それ以来、巣を作ることはなくなったけれど、この件でますます鳩が嫌いになった。どうも私は鳥と相性がよくないようだ。ドイツでは、1日に2度も「鳥爆弾」を落とされたことがあるし、イギリスの湖水地方で、岸辺に上がった白鳥の群れに襲撃されそうになったこともある。地面をのそのそと歩く白鳥なんて、少しも美しくはないということに、その時初めて気付いた。タイトル・ソングのように白鳥に乗りたいなんて、絶対に思わない。そのくせ、鷲や鷹、梟といった猛禽類は大好きなのだから、現金なものだ。