Catfish Blues/John Lee Hooker

蝉や鳩に起こされたことは何度かあるけれど、今朝は違っていた。窓の下で、か細く「ミューミュー」と鳴く声で眼が覚めた。あえて確かめなかったが、多分、生後数ヶ月の子猫の鳴き声に違いない。野良犬を見かけなくなって久しいけれど、それと反比例するかのように野良猫をよく見かけるようになった。特に、最近その頻度がさらに高くなっている。私が住んでいる所の1階芝生付近を、何匹もウロウロしているし、自転車でほんの10分程度走っただけで、少なくとも10匹以上に出くわすことが多い。しかも、どの集団も、私の好きな縞々模様や黒猫が多く、おまけに、生まれて間もない子猫を伴っているので、ついペダルを休めて眺めてしまう。直接、撫でたりしないで、じっと眼と眼を合わせてにらめっこするのが楽しい。そんな時、猫たちも逃げずに、ちゃんと私の相手をしてくれる。
前置きが長くなった。先日、ネット仲間のmsさんからとても貴重な映像を頂き、今日から少しずつ見始めた。前から見たいと思っていたブルーズのオムニバスのようなもので、今日見たものでは、そのルーツを辿って西アフリカまで旅していた。そこで、前から気になっていたAli Farka Toureを始めとするマリのミュージシャンの紹介までされていて、うれしくなった。私は、洗練されたものや、計算されつくしたものにはまったく興味がない代わりに、こういった土着の、泥臭いものには眼がない。
ところで、これを見始めた時、カーテンの隙間から何ものかの視線を感じた。ギョッとして外を見たら、ベランダの手すりに止まった鳩が、じっとこちらを睨んでいた。まさか、何年も前の「卵事件」をまだ根に持っているのか、と一瞬怖くなったけれど、威嚇するように鳴き声をたてるわけでもなく、おとなしくこちらを覗いているだけだった。その時、あることに気が付いた。見ていた映像で、綿花畑で黒人奴隷たちが歌っているものが、「歌」というより、モンゴルのホーミーのような不思議な唸り声にも似ていたのだった。動物たちは、ホーミーの音色に自然に引き寄せられて集まるという実験を、ずいぶん前に『鉄腕DASH』でやっていたことを思い出した。もしや、この鳩も、同じように引き寄せられたということなのだろうか。多分、思い過ごしだろう。でも、その後ギターによるブルーズ・ナンバーが始まると、すぐに飛び立ってしまったのだから、私の強引な分析も、案外当たっているかもしれない。