Let It Bleed/The Rolling Stones

一昨日からまた仕事が始まったのに、ちょうど体調の良くない時期と重なって、もう散々な状態だ。お腹と腰は痛いし、頭はボーっとする。それに9月半ばだというのに蒸し暑さ!そのせいか、しばらく鳴りを潜めていた蚊が、ここ数日、降って沸いたように出てきて、すでに何箇所も刺されている。昨日、食物連鎖の頂点に人間がいると書いたけれど、その時、ちょっとひっかかるものがあったので、「頂点(見かけ上)」としておいた。そう書いて賢明だったと思う。何しろ「頂点」にいるはずの人間の血を、あんなにちっぽけな蚊が吸うのだから。これこそまさに「鎖」となってつながり、食物連鎖が成り立っているということなのだろう。
そういえば、秋の蚊を「哀れ蚊」と呼ぶということを、中学生の頃、太宰治の小説を読んで初めて知った。でもそのタイトルを思い出せない。情けないことに、最近、記憶力がどんどん低下しているようだ。覚えていなくてもよいことまで、色々なことをよく覚えている、と言ってくれる人もいるけれど、そんなことは決してない。十代の頃の記憶力が、バカみたいに良かったことは自分でも認める。英語の単語なんて1回見ただけですぐに覚えられたし、長い文章も自然にスラスラと暗誦できた。もっと遡って、小学生の頃、掛け算の九九を学校で習う前に何気なく見ていたら、1〜2時間でいつのまにか全部覚えていた。それに比べると今はひどい。日頃使っていない部分から、どんどん退化していくのだとすれば、この記憶力の低下は、脳を使っていないことの現われに違いない。嘆く前に何とかしよう。
太宰治といえば、彼の生家『斜陽館』を訪れたことがある。本当は、トルコとエジプトを1人旅するはずだったのに、格安の「架空ツアー(往復の飛行機だけ仮のグループ・ツアーを組み、後はまったく自由行動)」が最少催行人数に満たず、ドタキャンされてしまった。その返却金で、急遽、東北旅行することに決めた。何年も前のことだ。でも、生家の建物より、その地域名産のスイカを、1人でほおばった記憶の方が鮮明なのだから、やはり食い気が勝っている。大きいのを丸ごとホテルに持ち帰り、小さな果物ナイフで切るのに苦労したのだから、忘れるわけがない。でも、味は普段食べているものとそう変わらなかった気がする。
タイトル・ソングは、たとえ一瞬でも、人間より上に立つことのある「蚊」のために。でも、これ以上刺さないでほしい。