Plein Soleil/OST by Nino Rota

某ボードでMatisse展の話題に触れている方がいたので、私も少し書きたくなった。このところずっと、仕事の最中には、こんな風に現実逃避してばかりいるようだ。
構図より色彩そのものに反応しやすい私にとって、当然のことながら、Matisseは好きな画家の1人なので、渡欧中にもいくつかの美術館で鑑賞した。といっても、何事に対しても、系統的に捉えたり、分析したりするのがあまり好きではないし、そもそも、そういうことが得意ではない私だから、特に計画も立てず、その場、その場の気分にまかせて、目に付いた場所でフラリと立ち寄ることが多かった。そのため、有名な作品がほとんどない、小さなギャラリーを覗いてみることもよくあった。そんな場所では、日本の大都市で開催される大々的な展示会できれいに並べられた名作を、ぎゅうぎゅう詰めの観客に紛れて見るのとは違い、肩が凝らず気の向くままに堪能できるのがうれしかった。特に、ニース近辺では、Matisseに限らず、多くの近代美術作品に触れる機会が多く、滞在がついズルズルと長引くばかりだった。たとえば、晩年、Picassoがしばらく滞在し、アトリエを設けていたアンティーブのグリマルディ城は、現在、美術館となっていて、陶器を中心とした作品が展示されている。それらには、代表作『ゲルニカ』のような強烈なメッセージ性は微塵も感じられないけれど、音楽で言えば「レイドバック」的な緩やかなリラックス感が、見る者の心にひしひしと伝わってくる。それが、コートダジュールの穏やかな気候や風景と絶妙にマッチして、まさに「ナチュラル・ハイ」状態に導いてくれる。そんな気分が最高潮に達したのは、ニースからバスで1時間ほど山の方にあるヴァンスという街に建てられた、Matisseがデザインした教会を訪れた時だった。シンプルな設計だからこそ、白い外壁と、鮮やかな黄色と青を基調としたステンドグラスの見事なコントラストが、一層映えわたっていた。
そこからさらに奥地に進んだサンポールには、マーグ財団美術館があり、またまたMatisseをはじめ、MiroやBraque、Giacomettiといったお気に入りの作品が、文字通り目白押し状態。バスを乗り継いで行った甲斐があった。
というわけで、今日のタイトル・ソングは、コートダジュールにふさわしく、『太陽がいっぱい』のサントラより。Nino Rotaの作る曲って、どれもこれも、メロディがどこか物哀しくて大好きだった。