'Cause I Saw You/Elliott Murphy

いつもと同じ電車に乗って、実家に向かう。久しぶりにCDを聴きながら。最初は、やはり慣れ親しんだバンドがいいのでHot Tunaの76年物。ネブワース・フェスティヴァルでのライヴ音源だ。調べてみると、この年のメイン・アクトはRolling Stones、他に10CC、Lynyrd SkynyrdTodd Rundgren's Utopiaなども出演している。そういえば、この時のLynyrd Skynyrdのライヴ映像をどこかで見た記憶がある。そこで「Hot Tuna」というアナウンスがあったので、「もしや・・・」と期待したのだけれど、残念ながら彼らの映像は映らなかった。
さて、Tunaのライヴ音源といえばアコースティック物が断然多いのに、これは珍しくエレクトリック・ヴァージョン。どちらも好きな私は、ドキドキしながら聴き始めた。なのに、たった1時間程度だなんて短すぎる。まるで、ラヴ・シーンの最中に中断された物足りなさのようだ。次に聴いたのはElliott Murphyの『Affairs』。Rさんが猟盤中に見つけてくれた物で、その心遣いがとてもうれしかった。「猟盤」という言葉は、ネットを始めるようになって覚えたものだけれど、まさに的を射た名造語だと思う。とは言うものの、私自身は猟盤をめったにしない。私はとても欲張りな上、貧乏性のため、猟盤に行くと目につくお店を全部見たい。しかも各店内の隅から隅までぬかりなくチェックしたい。そうなると、途方もない労力と集中力が必要となる。それを考えると、つい気構えてしまい、腰が重くなってしまう。もっと軽い気持ちで、フラリと見に行けば良いとわかってはいるものの、なかなかそんな切り替えができず、つい行きそびれてしまう。家から比較的近い地域に、中古盤店が点在しているというのに、これじゃほとんど猫に小判状態だ。
EMは、実家に着いた後もしばらく聴き続けていた。前にEric Andersenを聴きながら帰った時にも書いたのと同様に、EMもまた、電車の中で軽く聴くのにふさわしいタイプの音とは言えない。なのに、聴いているうちに周囲の喧騒を忘れてしまうほど、彼独自の世界へと誘われる。それにしても、EMはラヴ・ソングの中でやたらと「drowning」という言葉を使いたがる。そんなことに、今頃気が付いた。タイトル・ソングの中でも♪I'm drowning in an ocean of you♪だなんて歌っている。まるで歯の浮くようなセリフなのに、EMのアクの強い声で情感たっぷりに歌われると、つい騙されたくなるから困ったものだ。