Jack Orion/The Pentangle

電車に乗っている最中に、退屈しのぎに携帯電話からネット・アクセスしていた時、あるボードで地震のことを知った。北陸在住と関東在住のお2人が書き込んでいるので、意外に大規模なのかなと思いつつ、最近は天災に対する感覚が少々麻痺気味なので、さほど気に留めずにいた。ところが、家に着いてニュースを見ると、大変なことになっていた。ニュースどころか、すべてのチャンネルのほぼすべての番組が、地震報道番組に切り替わっていた。つい先日、台風の被害に遭った地域の復旧がやっと始まったばかりだというのに、こんな大地震が起こるなんてあんまりだ。阪神大震災の時のような火災があまり見られないのは、不幸中の幸い。でも、余震の大きさとその回数が報道されるたびにショックを受ける。被災地の方々の不安な気持ちを考えると同時に、もしこれが自分の身近で起こっていたらどうなるのだろうと思うと、本当にゾッとする。
なのに、その報道を知るまで、私は呑気にジャコランタン(カボチャをくり抜いて作ったランプ)の見物をしていた。府立植物園前に多数の巨大ジャコランタンがディスプレイされ、中にロウソクが灯されるという話を去年の今頃聞いて、ずっと見たいと思っていた。たまたま今年はタイミングが合ったので、ハロウィーンには1週間早いけれど、ちょっとだけ足を延ばすことにした。でも、カップルや家族連れでにぎわう中、1人で見物して写真を撮っている姿は、今ひとつ冴えなかったかも。
ジャコランタンは「Jack O'Lantern」と綴るので、よく似た曲をタイトル・ソングに選んだ。『Cruel Sister』に収録され、LPでは片面全てを占めていた長い曲だ。もちろん、ハロウィーンとはまったく無関係の内容。それどころか、トラッドにありがちな「殺人バラッド」の一種というべきだろうか。聴く者全てを魅了するというフィドルの名手Jack Orionが、自慢の演奏を聴かせて城中の人々を眠らせ、若い伯爵夫人の部屋に忍び込むはずだったのに、自分になりすました若い召使の策略にはまって激怒し、その召使を殺してしまう、という物騒なもの。こんなあらすじだけでは、風情も何も感じられないかもしれないけれど、実際にPentangleが繰り広げるこの叙事詩の世界は素晴らしい。そして、いつも思うことながら、Bert Janschの歌い方って、何でこんなにイロっぽいのだろう。J.J.Caleと同様に、聴いていたらヘンな気分になる。そう思うのは私だけ?