Little Red Rooster/The Rolling Stones

数年前から、私の住んでいる界隈でも、庭やガレージにクリスマス・ツリー(これぞ典型的日本語表記!)やイルミネーションを華やかに飾り付けているお宅をよく見かける。一戸建てだけでなく、私の住んでいるお隣りの棟でも、窓一面に小さなライトを飾り、暗くなると点滅させている部屋がある。こういうものを見るたびに、どうしても思い出してしまう光景がある。
大学卒業後、2度目の渡米先は、LAから少し南下したところにあるサウス・ラグーナという海辺の街だった。当時のボスがそこに住んでいた(後に、隣町のラグーナ・ビーチにさらに大きな家を買って引っ越した)。ボスのお隣りに住んでいたのがRuth & Bobという老夫婦で、奥さんのRuthは、とにかく可愛い物に眼がなかった。といっても、「可愛い」という言葉の定義が、私とは微妙にズレていたので、首をかしげたくなるようなことも多かった。何しろ、彼女はニワトリをこよなく愛し、家中ニワトリ・グッズだらけだったのだから、「可愛いでしょ?」と得意そうに見せられても、返事に困るだけだった(ニワトリに限らず、アメリカではブタやカエルもよく好まれていて、そういったぬいぐるみをよく見かけでも、ちっともうれしくなかった)。しかも、彼女はピンクが大のお気に入りで、いつもピンク色の服(おまけに、フリルやリボンだらけ)を着ていたし、家の外壁までピンク色に塗り替えていた。さすがに、車だけはピンクに塗り替えるのは費用がかかりすぎるといって、真っ赤な物で「我慢」していたのがおかしかった。
それでも、彼女の家のクリスマス・デコレーションだけは、文句なしに素晴らしかった。家の前に巨大なツリーや電飾を施しているのはもちろんのこと、ガラス張りの壁越しに、等身大よりさらに大きいサンタの人形が仁王立ちしていた。初めて見た時は、誰かがコスプレしているのだと思い、ギョッとするほど本物ソックリだった。
そして、家の中に入ると、畳1枚分ぐらいの大きさのガラス板を、氷の張った湖に見立て、そこに色々な動物や子供達のミニチュアを並べて、いかにも郷愁を誘うような冬景色を再現していた。湖の周囲には、小さな小屋も点在して、まるで小さな村そのもの。それはもう、見事というしかなかった。その時ばかりは、いつも目立っていた数多くのニワトリのぬいぐるみも、部屋の隅でかすんでいた。
タイトル・ソングは、そんな素敵な思い出を作ってくれたRuthのために。