Letter To The North Star/Hot Tuna

今日はJormaのバースデイ。1940年生まれなのでもう64歳になる。ギターを弾き始めて、すでに半世紀を経たというわけか。そして、私が『Fillmore』の映画を見て、彼に一目&一耳惚れしてから30年以上過ぎた。今はもう、その姿を見たり、声を聴いても、かつてのようなときめきは感じられないけれど、1人のミュージシャンとしてずっと好きであることに変わりはないし、「Jorma Kaukonen」というエキゾティックな名前を聞き、その活字を目にするたびに、まるで呪文を唱えられたかのように、一種独特の陶酔感すら得られる。
タイトル・ソングは、Tunaの4枚目のアルバム『Phosphorescent Rat』に収録されている。初めて聴いた時から、うらやましくなるようなラヴ・ソングだと思っていた、この曲に限らず、他のアルバムと比べて、この4枚目にはなぜか自作のラヴ・ソングが多い。そして「North Star」とは、きっと特定の誰かを象徴しているに違いないと思っていたら、案の定そうだった。去年再発された彼の1stソロ『Quah』のライナーノーツに、そのいきさつが詳述されていた。この2枚のアルバムは、発売年度こそ違うけれど、実はほぼ同時期にレコーディングされたという。当時Jormaは、最初の奥さんMargaretaと破局寸前の関係を修復するために、彼女をNorth Starになぞらえてこの曲を書いた。『Quah』にも、「Song For The North Star」という曲があり、もちろんそれも彼女に捧げられている。スウェーデン生まれのMargaretaだからこそ、North Starなのだろう。でも、私にとって「North Star」といえば、やはりJorma本人以外の何者でもない。
それにしても、Jormaという人は、時と場合によっては、male chauvinism(あえて英語で書く)の権化として非難されることがあるけれど、これまでの2人の奥さんのことを考えてみると、むしろその逆なのではないかと思う。女性をまるで消耗品のアクセサリーのように、とっかえひっかえしているミュージシャンが少なくない中で、いずれの奥さんも、まず何よりも、彼にとって頼りになるパートナーとしての役目を果たしている。今は亡きMargaretaはアーティストでもあり、賛否両論はあるものの、TunaやJormaのソロ・アルバムのジャケットを描いていたこともある。詩集も出していた。そして、現夫人のVanessaは、Jormaのワークショップ、Fur Peace Ranchの運営になくてはならない存在だ。彼の日記の中で、彼女に対する深い愛情や賛美、敬愛の言葉をよく目にするけれど、うらやましいと思うよりむしろ、自分の好きなミュージシャンが、堂々とそのように宣言していることをうれしく思う。