A Life Well Lived/Jorma Kaukonen

Spencerの死を悼むコメントが各所に寄せられている。音楽仲間や知人からはもちろんのこと、長年のファン達からの声も多く、そのどれに眼を通しても、彼がいかに愛すべき人物であったかということがよく伝わってくる。
Jeff Tamarkinは、自著『Got A Revolution』を執筆中にインタヴューした100人前後の人々の中で、話を聴くのが一番楽しかったのはSpencerだったと洩らしている。そして、JAの元メンバーの中で、過去のさまざまなエピソードについて、最も詳しく、かつ、正確に記憶しているのもまたSpencerで、彼のおかげで執筆がとてもスムーズに運んだと感謝している。そういえば、一昨年の夏に、そのバイオの出版を記念してシスコで行なわれた朗読会に、最盛期のJAのメンバーで出席したのはSpencerただ1人だった。その時点ですでに健康状態が芳しくなく、当時住んでいたペタルーマ(この地名を聞くと、すぐにNorman Greenbaumの同名アルバムが浮かぶ)からシスコまで出てくるのは、決して楽ではなかったと言われているにもかかわらず。そして、昨年のJAのDVD発売記念イヴェントにも顔を見せていた。その頃からすでに、人生の締めくくりを徐々に意識していたということだろうか。
昨日も触れた通り、SpencerはJAで最年長であったにもかかわらず、いくつになっても、一番子供の心を失わない人だったと言われている(この点に関し、Graceは彼を「childish(幼稚)」ではなく「childlike(無邪気)」と良い意味で表している)。その一方でJormaは、自分達がまだ「ガキ」だった頃、彼はすでに「大人」だったと語っている。多分それは、Spencerのトレードマークでもあった皮肉に満ちたユーモアやウィット、それに、時には奇異にも見えた気まぐれな行動は、彼が大人だったからこそ可能だったと言いたいのだろう。同時に彼は、音楽面で他のどのメンバーよりもプロとしての経験を積んだ大人だったというのも事実だ。つまり、ある意味でSpencerは、残りのメンバーにとって、音楽の師匠でもあったというわけだ。特に、Spencer&Jorma&Jackの3人は、JAのスポークスパーソンだったPaul&Graceに対し、音楽班としての立場を確固たるものにしていた。『ギミーシェルター』の映画の中で、仲間のMartyがヘルズ・エンジェルズに殴られた時、PaulとGraceは何とかその場を鎮めようとしていたのに対し、後の3人はぞれぞれの楽器の演奏を黙々と続けていたシーンが今も印象に残る。