El Aspirante/Lidia Pujol & Silvia Comes

近所のショッピングセンターの書籍売り場に行っている時、どこかで聴いたことのあるメロディが流れてきた。オリジナルではなくて、完全にBGM用にストリングス・アレンジされたインストルメンタル曲。耳に馴染んでいるはずのメロディなのに、それがJackson Browneの「The Pretender」だということに気付くまで数秒かかった。決め手となったのが♪I'll get up and do it again, Amen♪の部分だった。こんなシリアスな曲が、何の緊張感もないBGMにされているなんて、何だかひどい。その売り場では、これまでにもJimi HendrixやDeep Puple、Black Sabbathなどが、同様に骨抜きにされて、流れていたことがあったけれど、その場合は何となく笑えた。でも、今日は笑うどころではなく、イヤな感じだった。
タイトル・ソングは、スペインのS&SW達によるJBのトリビュート・アルバム『Cantame Mis Canciones』の中で、スペイン語でカヴァーされた「The Pretender」。ライナーによると、歌っている女性デュオは、レズのカップルらしい。ちなみに、辞書で調べてみたら、「pretender」をスペイン語にすれば「pretendiente」となるはず。なのに、なぜ「志願者/ライヴァル/候補者」を意味する「aspirante」となっているのか、よくわからない。
ところで、昨日は、J.J.CaleとLinda Ronstadtのライヴを聴いていた。Lindaは74年と75年の物。一番好きな時期のライヴなので、2枚続けてあっという間に聴いてしまった。特に、後者にはお気に入りの曲も多く、つい一緒になって口ずさんでしまった。この前後4〜5年間のLindaは、毎年、実に趣味のいい選曲のアルバムを出していた。そのほとんどが失恋ソングで、しかも、そこで歌われている相手のイメージは、いつも決まったように、気が多くて不誠実。そういう曲を一緒に口ずさんでも、幸い、私には全く感情移入できない。なのに、結構夢中になって歌ってしまう。もちろん、人前では絶対に聴かせられない代物だけど。ところで、その時期の1枚『Heart Like A Wheel』のアルバム・ジャケットは、確かNorman Seefによるものだった。だけど、Lindaのようにあまりシャープではない顔つきの人は、モノクロ写真があまり映えない。大学生の頃、彼の写真展を見に行った時、つくづくそう感じた。Joni MitchellやCarly Simonは、2人の個性が活かされて、とても魅力的に写っていたのに、Lindaだけはなぜか魅力が半減し、パッとしなかった。