Yesterdays/Marianne Faithfull

目下ある人の日記で「初来日に行っちゃった」シリーズが盛り上がっている。そこからヒントを得たのが、「何となく行っちゃった」シリーズ(1回限りになるかもしれないけど)。要するに、直前に気が向いて、フラっと行ったコンサートのことで、基本的に当日券で入場したものを対象とする。
最初に浮かぶのは、Flying Burrito Brothers。時は5月、会場は九段会館だった。彼らを初めて知ったのは『Gimme Shelter』の映像で。その時点で、特に惹かれたわけではないけれど、その後急速にアメリカン・ロックに傾倒するようになって、気になるバンドの1つとなった。とは言っても、いわゆるカントリー・ロックより、シスコ・サウンドの方が好みの私は、初来日を知っても、ギリギリまで決めかねていた。
たまたまその日、いい天気だったので行くことを決めた。当日券を得るため早めに会場に着いたら、誰もいなかった。時間潰しに、正面玄関の脇にある柱の土台部分に腰を下ろし、足をぶらぶらさせて本を読み始めた。やがてその姿勢にも疲れ、柱に背中をもたれて、両足を前に伸ばしてボーっとしていた。すると、誰かが近付いてくる気配がした。顔を上げると、メンバー達が堂々と正面からこちらに向かってくる。唯一その場に居合わせた私に向かって、みんな気さくに「Hi!」と声をかけながら、中に入っていった。その自然さは、まさに彼らのサウンドのイメージそのものだった。
しばらくそのままそこに腰を下ろしていたら、今度はカメラを持った人が声をかけてきた。自称写真家とやらで、私のポーズが絵になるので、撮らせてほしいと言ってきた。今も昔も写真が大の苦手(悲しいほど写りが悪いから。でも、写りが悪いと思うことこそ図々しい勘違いで、写真は正直に被写体を写すという説もある。そうかもしれない)の私は、すぐに断ったのに、結局、説得されて30分ぐらい付き合った。その時の私は、黒地のインド風ワンピースに髪は伸ばしっぱなしのロングで、ノーメイク。二コリともせずカメラを睨み続けていたのを覚えている。出来上がったら送るといって、連絡先を聞かれたけれど、教える代わりに名刺をもらった。結局、連絡しなかったことを、今頃になって後悔している。多分、笑える写真に違いないけれど、怖いもの見たさという気持ちもある。
こんな風に、コンサートが始まる前に色々あったので、肝心の内容は記憶が薄れている。ごひいきのSkip Battinのことさえ、あまり印象にない。当日券にもかかわらず、前から数列目の席だったということだけは覚えているのに。