The Baby Tree/Paul Kantner

ネット上で、懐かしい名前を発見!それはRosalie Sorrels。といっても、彼女のことをよく知っているわけではない。むしろその逆。Paul Kantnerが初のソロ・アルバム『Blows Against The Empire』の中で、彼女の「Baby Tree」という短い曲をバンジョーで弾き語りしているのが、とても印象に残っているだけだ。ロック・アルバムとして唯一ヒューゴー賞にノミネートされたことからもわかるように、宇宙的なコンセプトをもつそのアルバムの中で、その曲だけがちょっと浮いていた。それは明らかに、当時、Graceとの間に子供(現China Kantner)が生まれることが待ち遠しくてたまらなかったPaulの気持ちの表れのように思われた。同アルバムには、もっと具体的にその喜びを歌った「A Child Is Coming」というオリジナル曲もあるけれど、それだけでは足りなかったということなのだろう。ただし、作者のRosalie Sorrelsについては、当時のライナーには「フォーク・シンガー」と記されているだけで、ずっと謎の人物のままだった。それが今頃、『No Depression』というオルタナ・カントリー系雑誌に、8ページにおよぶインタヴューが掲載されているというのだから驚いた。今も現役で、CDも何枚か手に入るようだ。何と、Loudon Wainwrightなどもゲスト参加したライヴ・アルバムまで出ている。ただし、残念ながら「Baby Tree」のオリジナル・ヴァージョンを聴けるアルバムは見つからない。
こんな風に、ほとんど忘れかけていたミュージシャンの名前を、ふとどこかで眼にすると、とても懐かしい人に出くわしたような気持ちになるから不思議なものだ。インタヴューにも、大いに興味がある。でも、わざわざバックナンバーを注文すべきかということになると、ちょっと悩む。ほとんどの資料を、ネット上でチェックすることに慣れてしまった昨今では、なおさらそうだ。ネットを始める前に定期購読していた海外の雑誌も、今はずべてキャンセルしてしまっているのだし。
さて、Paulの話に戻る。タイミングよく、『Blows Agains The Empire』は9月に、ボーナス・トラック付きで再発されることになった。そしてこのアルバムのコンセプトをさらに膨らませた『Planet Earth Rock & Roll Orchestra』が、ついにデジタル・リマスター初CD化された。オリジナル発売は83年でちょうど私の氷河期だったため、ずっと手に入れそびれていた。『Blows〜』ではまだ生まれていなかったChinaだけでなく、その後生まれた腹違いの弟、Alexまでコーラスで参加しているとは、月日の流れを感じる。