Sinno Me Moro/Alida Chelli

2日前に父の一回忌法要を行なったけれど、実際の命日は今日。
1年前のその瞬間、そして、それからしばらくの間、自分でも驚くほど冷静だった。当時の日記を読み返してみても、それがよくわかる。その気持ちは今も変わっていない。逆に言えば、まだ父の死をきちんと受け止めることができずにいるから、こんなに平気なままでいられるに違いない。少しでも深く考えようとすると、救いようがないほど落ち込むことがわかっているので、父がもはやこの世に存在しないという事実に、あえて気づかないふりをしている。多分これは、本能的な自己防衛策だろう。
ただ、1つだけリアルに覚えているのは、亡くなる1ヶ月ほど前にお見舞いに行った時のこと。その時点ですでに、物を食べようとする意欲が失せて、点滴とチューブ食に頼らざるをえなくなっていた。なのに突然、時間の経過を知りたいので、腕時計をはめてほしいと言われた。それに従うことが辛くなるほど、その手首はやせ細っていた。そんな細さでは、とても時計を支えることができっこないと思ったので、しばらくためらった。でも、結局、押し切られて、言われる通りにした。案の定、金属製のベルトはずいぶん余り、重い手錠の鎖のように、だらんとぶら下がっていた。痛々しすぎた。若い頃は、庭でバーベル、室内では鉄アレイで鍛え、その姿は当時の横綱大鵬に似ているとも言われていた(もちろん、あんなに太ってはいなかったけれど、顔が似ていた)のに、もはやその面影は消えていた。
タイトル・ソングは『刑事(Un Maledetto Imbroglio)』のテーマソング。邦題は「死ぬほど愛して」。映画のラストで、Claudia Cardinaleが警察に連行される恋人(殺人犯)を追って行くシーンに流れる。♪Amore, amore, amore, amore mio♪というフレーズが有名だ。これをあえて選んだのは、私が小さい頃、父がよく歌っていたから。母音の多いイタリア語は覚えやすいので、いつのまにか私も真似することができた。主演のCCは父のお気に入り女優でもあった。同じようによく口ずさんでいたのは「Bye Bye Birdie」。でも、歌っていたAnn Margaretは、あまり好みではなかったようだ。父の好みはなかなかうるさくて、いわゆるセクシー系に対しては「下品だ!」と眉をひそめ、逆に、Audrey Hepburnのようなタイプ(清純派?)にも、少しも興味を示さなかった。それなら、どういうタイプが好きかといえば正統派の美人。ただし、CCだけは唯一の例外。「くしゃっとしたファニー・フェイスだけれど、かわいい!」と、いつも絶賛していた。