Santa Claus Retreat/Hot Tuna

早起きして、2時間かけて古い家に向かった。2度目の引っ越し予定は28日で、部屋の明け渡し期限は29日。それまでに全てを終えなければならない。3日前、あれほど取り乱した最大の理由は、荷物の積み残しではなく、きちんとまとめていた物まで、そこいら中に容赦なく撒き散らされたという、信じがたい事実にあった。居間の一番奥に置いていた本が、キッチンと玄関の間あたりまで放り投げられているということからも、その乱暴狼藉ぶりがよくわかる。また、押入れの中の扇風機は、部屋の真ん中で、人がうつ伏せになったようなポーズで、バタっと倒れていた。何もかもひっくり返されてしまったので、どこに何があるのかわからなくなっている。本来、不要なはずの手間と時間をかけて、これらを元に戻すだけで、一体どれだけの時間が余分にかかるんだろう?そう思うと、どうしようもない絶望感に襲われる。こんな状態で、作業をてきぱき進められるわけがない。
そんな私を見るに見かねて、助っ人役を買ってでてくれた人がいた。原形を留めないほど乱れきった部屋を見られるのは、耐えられないほど恥ずかしいことだけれど、この期に及んで、そんなことを言ってはいられない。私の人間性まで否定されるのではないかという、一抹の不安を感じながらも、その申し出に甘えるしかなかった。当然のことながら、1人でやるより2人の方が、ずっと効率が良い。自分では持てない重い物も、楽に運んでもらえる。クリスマス・ムードに浮かれた近所のケーキ屋で、2人分のケーキを買い、缶コーヒーと共にささやかなおやつタイムというのも、それほど侘しくはなかった。多分、時間が経てば、ちょっぴり甘く、そしてほろ苦い思い出話となるに違いない。
私にとってサンタともいえる助っ人は夕方で立ち去り、私1人残って、作業の続きをした。今日中に終わるかもしれないという考えは、あまりにも現実離れしていた。念のため、近くのビジネス・ホテルを予約しておいたのが功を奏した。それどころか、明日中に終えられる自信すらなくなりつつあったので、さらにもう1泊、予約の手配をしようとしたところで考え直した。1泊追加するぐらいなら、思い切って、再引っ越しの当日まで、2泊追加した方が無難だろう。出費は痛いけれど、やむをえない。そう思いつつ、夜の10時過ぎまで作業を続けて、ホテルに向かった。何日にもわたって、無数の段ボールと取っ組み合いを続けているせいで、全ての指先の皮膚がひび割れ状態になって、ほとんど感覚がない。それでも、この苦行は明日もまた続く。