The Night Belongs To Mona/Donald Fagen

Donald Fagenのニュー・アルバム『Morph The Cat』に、私のHNが入った曲が含まれているということを、人から聞いた。早速、使わせていただこう。夜更かしばかりしている私には、ちょうどピッタリのタイトルだから。
これは、彼にとって10数年ぶりのソロ・アルバムだということで、色々なところで話題になっているのを眼にする。でも、正直に言うと、私にとって、彼は、これまであまり縁のなかったアーティストの1人と言える。Steely Danは、初期の頃は決して嫌いではなく、時々聴いていた。多分、同時代の他のバンドにはない都会的なサウンドが、新鮮に耳に響いたんだろう(特に、私の場合、泥臭い物を中心に聴いていたし)。
それが、いつ頃から疎遠になっていったかというのを、改めて考えてみると、多分『Aja』のあたりだったと思う。こんなことを平気で言うと、「アンタの耳はどうなってるの?」という声が、あちこちから飛ぶのは必至だろう。でも、仕方がない。
一分の隙もなく、計算し尽くされた、緻密なサウンドだからこそ、かえって、私を後ずさりさせたに違いない(大きな声では言えないけれど、あのジャケットも大嫌いだった。私は、欧米人のイメージする、いわゆる「アジアン・ビューティ」というものの良さが、さっぱりわからない)。
そもそも、私は、何に対しても、「完璧」な物が苦手だった。たとえば、ファッションにしても、上から下まで、つけいる隙もなくシャキっとキメた物には、まったく興味がない。私自身、そんな物はさっぱり似合わないし、他人のそういう姿を見ても、敬遠したくなるだけ。男女いずれの容姿についても、完璧な美形より、少しだけ崩れている方が好き。ヴォーカルにしてもそう。声楽家が声量豊かに歌いこなすようなのは、どうも性に合わない。ロックだけに絞ってみても、同じことが言える。私の好きなヴォーカリストって、全員、アクが強かったり、調子っぱずれだったり、鼻にかかっていたり、ハスキーだったりする。要するに、何についても、「洗練」からほど遠い物を好むということなんだろう。
ところで、現在のHNを使い始めて約3年になるけれど、いつのまにか、すっかり「Mona」になりきっている自分がちょっと怖い。それ以前にもっと長期間使っていたHNは、結局、最後まで馴染めないままだった。人前で名乗る時に照れが伴ったし、オフ会で、その名で呼ばれても、自分のような気がしなかった。
なのに、今では、むしろ本名で呼ばれる方が、とても恥ずかしくてたまらないのだから、おかしなものだ。