The Shape I'm In/Rick Danko ( Live )

昨夜、色々な意味で「あっ!」と驚くような映像を見ることができた。
今は亡きRick Dankoが、バック・バンドを従えて野外でライヴを行なっているもので、パッケージには「Somers Point, NJ, 9/12/1988」とだけ記されていた。
実際に見始めて、その規模の小ささに驚いた。木造の建物の脇に簡単に組み立てられたちっぽけなステージの上に、Rickとあと3人のミュージシャン(その時点では、誰なのか不明)が並んでいる。ステージ後方の建物の側壁には、「Good Old Days」と書かれた横断幕、そして、屋根には星条旗が風にたなびいていた。その様子は、まさに典型的なアメリカの田舎町で見られる、のどかなお祭り風景でしかなかった。
そんなところで、Rickがライヴを行なうというのも、何だかおかしな気がしたけれど、もっと驚いたのはその姿!
晩年、不摂生がたたってひどく肥満していたのは知っていたし、そういう姿の写真を何枚か眼にしたことがあった。けれども、実際に、動く映像で見ると、そのインパクトはさらに強烈だった。まるでシャツの下にサッカー・ボールか、はたまた、スイカでも隠しているのではないかと疑いたくなるほど丸々としたその姿は、滑稽というよりむしろ、哀れにすら感じられた。
ただ、88年の段階で、ここまで肥大化していたかという疑問が沸いた。いくらなんでも、それはありえない。調べてみると、実は、90年代後半のものだということがわかった。それなら辻褄が合う。さらに調べると、会場は、過去30年以上にわたって、9月のレイバー・デイ週末にイヴェントが開かれている公園だということも判明した。そのせいか、カメラの前を、アイスクリームを手にした子供達が、平気で通り過ぎていく。子供達だけではない。大人まで、ステージそっちのけで、画面の左右を行き来する。
それでも、Rickは、ほんのわずかな観客の前で熱唱していた。そして、彼以上に大活躍していたのが、立ち姿(特に、背中の丸め具合)がLevon Helmにソックリなハーピスト(後に、Sredni Vollmerと判明)!折れそうに細い身体で、メロディ・ラインを吹きまくって、とにかくすごかった。「Walking Blues」ではリード・ヴォーカルまでとっていた。
さて、肝心のRickは、おなじみの持ち歌だけでなく、「普段はLevonが歌っているんだけど・・・」と言って、「The Weight」まで披露してくれた。
撮影時のミスで、映像全体に緑色のソフト・フォーカスがかかっているというのも、古ぼけた写真を見ているようなノスタルジーが強調されて、かえってよかったと思う。