Stealin’/憂歌団

昼間、古い日記を書いていて、そのタイトル・ソングが『Silk Purse』に収録されていることから、サイフつながりの苦い体験を思い出した。
これまで、たった1度だけスリに遭ったことがある。しかも、意外な場所で。滞米中、1度だけバス・ジャックに遭ったことがあるものの、スリや引ったくりは1度もない。半年間のヨーロッパ放浪中も、快適そのものだった。どう見ても、お金を持っているようには見えなかったからに違いない。スリどころか、電車で移動中に、知らないおばさんが手作りのランチやお菓子を分けてくれたり、田舎の駅に着くと、おじいさんが、私の荷物を自転車の荷台に載せて運んでくれたりと、親切な人にはよく遭遇した。
それなのに、日本でスリに遭うなんて、一生の不覚!今から10年ほど前のことだった。当時住んでいた大阪は、スリや引ったくりが他の地域より多いと言われていたけれど、現場はそこではなく、なんと京都。たまたま、Barbieの催しがあったため、わざわざ遠出して見に行き、掘り出し物を見つけて、ホクホクしながら河原町を歩いている最中の出来事だった。妹が学生時代に住んでいたおかげで、私も京都にはそれなりに馴染んでいたため、すっかり油断していた。やられたのは、リュック型の黄色い革のバッグ。背負っていたのがマズかった。気がついたら、脇のファスナーが開いていた。それでも、まさかスリの仕業だとは思わず、うっかり閉め忘れているものと思い込んだ。ところが、いくら探しても財布が見つからない。そこで初めて事態が呑み込めた。そして、情けなくなった。こう見えても、意外に隙を見せないタイプで、痴漢とスリに1度も遭ったことがないのが自慢だったのに。
急いで交番に飛び込み、被害届けを出した後、すべてのカードの使用をストップさせた。警察の処理は手馴れたもので、「気の毒ですがあきらめて下さい。」と、事務的に言うだけだった。普段は現金をほとんど持ち合わせないのに、よりにもよってこの時は5万円も持っていたのが痛かった。他にも、たまっていたポイント・カードや金券が、1万円分ほどあった。泣きたいというのは、まさにこのことだった。
不幸中の幸いで、小銭入れだけポケットに入れていた。掻き集めた小銭と回数券やプリペイド・カードを利用して、何とか家に辿り着いた。そして、損失分を、何らかの形で必ず取り戻そう!と固く誓った。すると、その誓い通り、その年の暮れまでに、懸賞や投稿の賞金によって、損失以上の利益を得ることができたのだから、めでたしめでたし。