Night Of The Arrival/Jud Newcomb

昨日、スペースの都合で、肝心のライヴの内容を書きそびれていた。
まず登場したのは、cafe the eelというトリオ。実は約15人のユニットで、今回3人で演るのは初めてだという。各自、複数の楽器を扱い、担当パートを交替するというスタイルは、なかなか面白かった。そういえば、開演前にJudもこのバンドを褒めていた。それに、英語で歌う場合、不自然な巻き舌でヘタクソに歌われるとイライラするけれど、彼らの場合、すんなりと歌詞が耳に入って全然イヤミがないのもよかった。
そして、いよいよメイン・アクト。Walter Tragertとの共演だった去年とは違い、今回は、オハラマヤさんという、初めて名前を聞く日本人女性シンガーと一緒。正直言って、ちょっと不安だった。でも、そんな心配は無用だったことが、彼女のソロを聴いたとたんにわかった。ソフトフォーカスのかかった、独特のヴォーカルは、涼しい木陰でうとうととまどろんでいるかのような、心地良さを与えてくれる。消えそうな声で、はずかしそうにしゃべるトークも、声フェチの私にはたまらない。
一方、Judは、マヤさんをサポートする時も、彼らしさを失うことなく、そのくせ、前面にしゃしゃり出ることもなく、器用にこなしていた。自らのソロの時は、昨年同様、CDで聴くよりずっと力強いヴォーカルだけれど、歌詞が聴き取りやすいため、夢中で聴き込んでしまう。磨り減るほどLPを聴いていた時代には、曲のタイトルも歌詞も自然に覚えてしまい、ライヴで一緒に口ずさむことが多かったけれど、多くのCDが簡単に手に入るようになった昨今では、さすがに、全タイトルを覚えたり、歌詞を暗記するまで聴き込むことはなくなった。それでも、このように、歌っていることがその場で耳に入ってくると、情感がより一層伝わってくるのでうれしい。
終了後、2ショットを撮らせてもらおうとしたら、カメラの調子が悪くて写らない。仕方がないので、少しだけ言葉を交わし、秋の再会を約束して、その場を離れることにした。ドアを出て、エレベーターを待っていたら、なんと、店内から出てきたJudに呼び止められた。スタッフの女の子のカメラで撮ってもらい、後で送ってもらったらいいと言う。彼はいとも簡単に言うけれど、知らない人に迷惑をかけるわけにはいかないし、写真にはあまりこだわらないので、お礼を言って辞退した。それなのに、ほぼ強引に中に連れて行かれた。案の定、その女性には、事情が伝わっていなかったようで、きまりが悪いと同時に、申し訳なかった。でも、Judの心遣いはうれしかった。