Casey Jones/Warren Zevon

ホテルにチェックインした後、会場のRain Dogsに向かった。まだ時間があったので、店先の椅子に腰を下ろして待つことにした。まもなく、少しずつお客が集まってきた。そんな中、キャップをかぶった長身の人が通り過ぎたので、もしやと思って顔を上げると、Judが手を振っていた。「ああ、よかった、覚えていてくれた。」そう思いながら手を振り返したけれど、あえて向こうのテーブルまで行って、挨拶する勇気はなかった。彼の傍らには、初対面のJon Deeもいたので、緊張してしまった。
時間通りに開演し、まず、水田十夢バンド。どこかで見た顔だと思ったら、昨年、Judが初来日した時にもオープニング・アクトを務めたラリーパパ&カーネギーママの残党だった。Grateful Deadでおなじみの「Casey Jones」のカヴァーも聴けて、すでに私はゴキゲン。
こんな、ちょうど良い前ふりの後で、Resentmentsが登場。ステージと客席の段差がないため、文字通り、眼の前に彼らがいる。アメリカで見たいくつかのライヴでも、こんなに間近なものはなかった。
右端のStephenから順に、ヴォーカルを取っていった。その時からすでに舞い上がっていた私は、細かいことをほとんど覚えていない。ライヴを見に行く前に、いわゆる「予習」をしないということは、<a href="http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=435022&log=20051125">前にも書いた</a>。そもそも、時間的にも不可能だった。
でも、今回もまた、そんなことはまったく関係なかった。一番楽しみにしていたのは、声フェチの私のストライク・ゾーンど真ん中とも言えるJon Deeの生ヴォーカルだったけれど、それ以上にメロメロになったのが、その彼のラップ・スティール!プレイする姿もまた、見事、絵になっている。音楽でトリップできるって、まさにこんなことなんだ。いつのまにか、彼の正面にいた女性が踊り始めていた。その姿を見て、ふと、『フィルモア』の映画で、Deadの演奏中にステージ傍らで優雅に踊る女性のことを思い出した。そういえば、その時の曲は、水田十夢バンドがカヴァーした「Casey Jones」だった。
客席とステージが絡み合うライヴといえば、昨秋、磔磔で見たMarc Bennoの時もそうだった。でも、今回はそれ以上。Resentmentsの面々も、喜んでいるようだった。そのまま、時間はどんどん加速して過ぎ行き、気がつけば、アンコールを求める暇さえなく、全てが終わっていた。まるで、2時間半余り、魔法にかかっていたみたい。
タイトル・ソングは、Deadのトリビュート・アルバム『Deadicated』より。