Such A Night/Dr. John

昨夜は気持ちが昂っていたせいか、寝付いて2時間ほどで眼が覚めた。それから朝までウトウトしただけで、早めにチェックアウトして向かったのは、Resentmentsが泊まっているホテル。迷わぬよう、昨夜のうちに下調べしておいた。
驚くほどこじんまりしたホテルのロビーには、高い仕切りがあって、人の動きが見えづらい。身を乗り出して待つことにした。
まず、ドラムのJohn Chipmanが外から戻ってきた。あっという間だったので、何も言えなかった。しばらくして、また誰か入ってきた。Stephenだった。私より先に”Good morning!”と挨拶してくれただけでなく、そばにいたJudにも、私が来ていることを知らせてくれた。相変わらず気配りの細かいJudがそばに来てくれたので、見送りに来たことを伝えると、荷物を取りに一旦部屋に戻った後、隣に腰掛けて、出発までずっと相手をしてくれた。途中で、他の4人も集まってきたけれど、話しかけるきっかけがつかめず、横目で観察するのが精一杯だった。それでも、Stephenがそばに来ると、前から気になっていた質問を投げかけた。「来日はこれで2度目?」「いや、3度目。」「80年代に、Jim KweskinやGeoff & Maria Muldaurと来たのと、あと1回は?」と尋ね直すと、Bonnie Raittの来日にも同行したという。なるほど。
彼はそのまま私の右隣に座り、何かを書き始めた。どうやら、新しい歌詞を思いついて、忘れないうちにメモしているようだった。そんな場を目撃できるなんて、信じられない。
結局、空港に向かうバス・ターミナルまで歩いていくというので、図々しくお供させてもらった。まだ言葉を交わしていなかったChipmanと並んで歩き、食べ物やら何やらといった、ありきたりの会話で意外に盛り上がった。どうやら彼は、珍しい建物や看板に興味があるようで、時々立ち止まって見上げている。実は、早起きしてホテルの周辺を撮影して回ったとも言っていた。それなら、今度来た時には、難波界隈を案内してあげたい。さぞかし喜ぶだろう。
バス・ターミナルに着くと、勇気を奮ってJon Deeに近づき、どうしても言いたかったことを伝えた。
”Everybody at the show was so impressed with your lap steel guitar!”それに対し、「それが自分の仕事だからね」と謙遜しながらも、その顔に浮かぶ満面の笑みが彼の心を物語っていた。そして、この上もなく優しい表情で思いっきりハグしてくれた。
ついに出発の時間がやってきた。そう遠くないいつか、きっとまた日本に戻ってきてくれることを祈りながら、バスを見送った。