Fine Thing/Vinegar Joe

野菜好きの私には、ほぼ年中、眼の毒のような光景が広がっている。そう、周囲の至る所に、おいしそうな野菜畑!見ているだけで涎が出そうになる。とりわけ、この地域の特産で、今や「幻の野菜」とされる「すぐき」畑のそばを通るたびに、思わず1本、引っこ抜いてしまいたい衝動に駆られる。何しろ、希少価値があるので、たとえ地元でも店頭に並ぶことはなく、すぐに加工に回されて、法外な値段がつくのだから。
元々、野菜は何でも好きだった。でも、これほど「葉っぱ中毒」を自覚するようになったのは、今年になってからだった。4月頃にも1度、この日記に書いたけれど、その後どんどん症状が悪化(?)し、今では、葉っぱの写真を見ただけで、文字通り「パブロフの犬」状態になっている。
毎年恒例の「七草粥」を皮切りに、この1年間、まるで何かに憑かれたかのようにせっせと葉っぱを食べ続けている。特に、店頭で見かけるたびに手を出さずにいられなかったのは、春キャベツと菜の花と水菜。そして、葉っぱではないけれど、万願寺とうがらし。でも、それら以上に私を夢中にさせたのは、意外な物だった。「間引き大根」、そう、、まだ大きくなる前の、やせてひょろひょろとした大根のこと。何気なく買ってみたら、そのシャープな味にハマって、抜け出せなくなった。今は、旬の大根を横目で見ながら、もはや手に入らなくなった間引き大根が恋しくてたまらない。もちろん、成長した大根の葉っぱも捨てがたいけれど、1本丸ごと買っても、「根」の部分には、あまり興味がないので、食べ切るのに苦労する。
代わりに、手が伸びるのは日の菜と赤かぶ。いずれも、葉っぱ付きの物を買って、もっぱら葉と茎を楽しむ。といっても、お料理がサッパリ苦手なので、手っ取り早く、かつ、おいしく食べる方法といえば1つしか浮かばない。それは酢漬け。春キャベツを次から次へと買いすぎて、余った時の保存法として見つけたのが酢漬けだった。うれしいことに、この方法は、ほぼ全ての葉っぱにも応用できる。ビニール袋に好きな葉っぱを適当に切って入れ、そこに塩(キャベツの場合は胡椒も)を軽く振って揉み、酢と味醂を適当に加えるだけ。それを冷蔵庫に入れてしばらく置くと出来上がり。あっさりとした酸味が、あきれるほどに食欲をそそる。日持ちもするので、今は、何種類もの酢漬けが冷蔵庫に眠っていて、その日の気分で、好きなものを選んで食べている。おかげで、調味料の中で、酢の消費量だけが、ぐんぐん伸び続けている。900ml入りで、すでに10瓶以上空になった。