No Expectations/The Rolling Stones

お昼過ぎにブザーの音。ドアの向こうには、郵便配達員が立っていた。抱えた荷物は全部エアメイル。CDが入っているパッケージが2つと、もう1つは、まるで遅れて来たサンタの持ち物のような巨大な袋(でも、色は青)だった。配達員は「すみません、袋は差し上げられません。」と言いながら、中から大きな段ボール箱を取り出した。そこに印刷された文字を見たとたん、何が入っているかを悟り、すぐさま奪い取ろうとした。抱えきれないほど重かった。昨秋、出版されるやいなや注文した本が今頃届いた。Craig Fentonという人が書いた『Take Me To A Circus Tent』。中身は「The Jefferson Airplane Flight Manual」というサブタイトルが示す通り。JAのバイオグラフィとしては、すでに、音楽ジャーナリストJeff Tamarkinにより、徹底的にリサーチされ、音楽を超えたノンフィクションとしても質の高い『Got A Revolutin』という名著が出ている。今回の物は、インタヴューが中心で、また別の視点から楽しめそうだと期待していた。心を躍らせて開封すると、まず、その大きさに驚いた。まるで、何かのテキストのようで、ゆうに500ページを超えていた。握力のない私の左手だけでは、30秒(誇張ではなく、実際に時間を計った!)も持ち堪えられないほどの重さだった。
表紙をめくると、やたらと日付けや曲名が眼に入る。前書きを読むと、全体の半分近くが、ほぼ全ての歴代のライヴ音源と、スタジオ・アルバムに関する詳細なデータで占められていることがわかった。これはすごい!次に、Q&A形式で250問余り。そして、最後に200ページを超えるインタヴューが添えられている。
まだ、軽く眼を通しただけなので、詳しいコメントはできないけれど、少なくとも、インタヴューに関しては、その人選に疑問が残る。アルバム・デビュー前に脱退した2人のメンバーや、多くのサポート・ミュージシャン、あるいは、関係者のインタヴューまで載っているのに、なぜか、Grace、Jack、Jormaの3人は、ひと言も答えていない。Spencerはすでに故人なので、最盛期のメンバーのインタヴューは、残りの2人分(PaulとMarty)しか収録されていないということになる。今なお色々と問題になっているメンバー間の確執がこんなところにも影響しているのかと思うと、シラけてしまう。
前述の『Got A Revolution』は、前書きからすでに夢中になって読み漁ったのに比べ、こちらは、気が向いた時に、適当に開いたページを読んだり、特定の日時のライヴについて調べたい時、参考にするという使い方になりそうだ。