Where I Like To Stand/Vashti Bunyan

地下の会場を見つけるのにやや戸惑ったものの、結局、家から自転車で30分足らずで着いた。ところが、階段にズラッと並んでいるのが、当日券を求める列だと知ってビックリ!さらに、前売り券持参の列に進むと、そこもまた、予想外の人混み。しかも、いつもとはどことなく違う雰囲気が漂っていた。その理由は、すぐにわかった。Vashti Bunyanのライヴだとは思えないほど、客層が若い。ざっと見回すと、20代前半がほぼ9割を占めていた。不安になって、もう1度場所を確認せずにいられなかった。間違ってはいなかったけれど、それでもまだ理解しがたかった。
けれども、ライヴが始まって、ようやく納得できた。若者達は、前座を務めるクラムボンのファンだった。このトリオの噂は耳にしていたけれど、まさか、こんなに人気者だなんて。ステージに上がったとたん、客席は、少なくとも私を除いて、すっかり盛り上がっている。大きく分類すれば、ロリータ系ヴォイスともいえるヴォーカルは、基本的に、私好みのはずなのに、何かしっくりこない。多分、それはわざとらしく、押し付けがましいトークのせい?そもそも、どうにか最前列に潜り込めたとはいうものの、ギューギュー詰めのオールスタンディングで、じっくり味わえるわけがない。
元々、気の短い私はだんだん不機嫌になってきた。それでも、Vashtiが登場すると様子は一変!私のポジションはさらによくなり、Vashtiからわずか1メートル余りの真正面で、何度も眼が合った。
1つ1つの曲の前に、それについてちょっと恥ずかしそうにコメントする彼女の姿は、実に可愛らしい。何年か前のSissy Spacekを、もっとキュートにした感じ?無理に若作りしていないのに、内面的な少女らしさが全身ににじみ出ている。そして、生で聴く歌声は、CDよりさらに弱弱しい。
サポートするのは、Vashtiの子供達かと間違えるほど若い男女で、それぞれ、ソロを1曲ずつ披露した。特に、Jo Mangoのカリンバの弾き語りには驚かされた。しかも、その澄んだ声といったら・・・。今回のライヴ最大の予期せぬおまけだった。
結局、3度のアンコールを含めても、1時間余りのステージは、これまでで最短だった。それなのに、短さを感じなかったのはどういうことだろう?
ライヴが終わっても、フロアはごった返していて、ほとんど身動きが取れない。それでも、人ごみをかきわけて早々と外に出た。
”A dream is just a dream and a legend is just a legend.”ふと、そう思わずにはいられなかった。
そして暗闇の中、家に向かって自転車を走らせた。