There'sATableSittingInHeaven/JormaKaukonen

Jormaのニュー・アルバム『Stars In My Crown』が到着。送料を浮かすため、他のCDとまとめて注文していたのに、なぜかこれだけ優先して届けてくれるという粋なはからいだった。
グラミー賞にもノミネートされた前作『Blue Country Heart』から早5年、今回も同じカントリー畑の豪華メンバーがバックを務めると言われていたのに、結局、引続いて参加しているのはByron House(ベースだけでなく、プロデュースも担当)だけだった。レコーディングは、やはりナッシュヴィルで行なわれたものの、レーベルは大手のコロンビアからレッドハウスに変わっている。早くからレコーディングが行なわれていたのに、発売がこんなに延びたことを考えると、何らかのトラブルがあったということだろうか?
でも、肝心の中味はそんな不安を一掃するものだった。良くも悪くも、前作と同じ路線だと思っていたのに、聴き始めた瞬間に「何かが違う!」と直感した。そして、様々な思いが頭をよぎっていった。うまく言えないけれど、今から30数年前に、初ソロ・アルバム『Quah』を聴いた時の感覚によく似ている。まず、歌い方がいつになくやさしい。特に、ここ何年も、無理に力を入れているのか、あるいは年齢のせいなのか定かではないけれど、ずいぶん野太くなった声がどうも好きになれなかったので、こうして自然な歌い方に戻ったのは予想外にうれしい。
『Quah』を連想した理由は他にもある。一部の曲でストリングスが効果的に使われていること。そして、目立って内省的なアルバムだということ。ここ数年の彼のオンライン日記を読めばわかるように、すでに還暦を越えた彼は、日常的に死について深く考え、それを身近なものとして受け止めるようになっている。それと共に、今、自分が生きている(彼の言葉で言うと「生かされている」)ことに対する感謝や喜びをよく口に出している。
そんな思いがこのアルバムのコンセプトとなっているのは、一目瞭然と言える。数少ない歌詞付きの新曲「Heart Temporary」だけでなく、カヴァー曲の「Mighty Hard Pleasure」、「No Demon」、「There's A Table Sitting In Heaven」、「When The Man Comes Around」などにも、これまでの人生を顧みつつ、残された人生をいかに意義深く生きようかという、悟りにも似たJormaの確固たる気持ちが顕著に表れている。それが決して押し付けがましくなく、耳に気持ち良く響いてくるので、私には珍しく(?)、すでに10回以上繰り返し聴いている。ある意味では、スピリチュアルズの要素すら感じられるアルバムだと思う。