Calvary/Levon Helm

8月に予約していたLevon Helmの『Dirt Farmer』がようやく届いた。25年ぶりのソロ・アルバムだということを抜きにしても、純粋に私好みの音であることは、事前の試聴ですでにわかっていた。そして、実際に聴いてみると、当然、それ以上のものだった。
咽頭癌を克服したLevonが、どのようないきさつでこのアルバム発表するに至ったかについては、ライナーノーツに彼自身の言葉でわかりやすく語られていて、それを読むだけで涙が出てきた。
取り上げてられている曲はいずれも、彼が幼い頃から慣れ親しんできたトラディショナルや、他人のカヴァー曲ばかりであるけれど、その1つ1つについても丁寧にコメントされていて、それらがいかに愛着をもって選ばれたかということがよくわかる。
その中で、アルバム・タイトルのヒントにもなった「Poor Old Dirt Farmer」は、『The Dollmaker』の製作中に知った曲だという。『The Dollmaker』?それは、忘れもしないタイトル!
再結成The Bandが来日した時、Levonと交わした会話の中に、その数年前に観た『Coal Miner's Daughter』の話もあった。そこから映画の話題に発展し、今後の出演予定を尋ねると、すでに私も知っていた『The Right Stuff』の他に、『The Dollmaker』でJane Fondaと共演することも教えてくれた。ところが、何年待っても、公開のニュースは届かなかった。実は、劇場公開作品ではなく、TV用の作品だということがわかったのは、ずいぶん後になってからだった。結局、現在に至るまで、観る機会がないままだけれど、こんなところで改めてその題名を眼にすると、観たくてたまらなくなってくる。
さて、いずれ劣らぬほど趣味の良い選曲の中で、ラストを飾るのは、Buddy & Julie Millerによる「Wide River To Cross」。最後にこの曲を選んだのは、歌詞がそのまま彼の気持ちを代弁しているからに違いない。この何年間かに彼が味わったであろう様々な事柄を想像し、歌詞と照らし合わせながら聴いてほしい。たとえば、♪I'm only halfway home, I gotta journey on to where I'll find the things that I have lost. I've come a long long road, still I've got miles to go, I've got a wide wide river to cross〜♪というフレーズなんて、誰もが眼を潤ませるはず。
性悪美女に、人生をメチャクチャにされた(?)男性のことを歌った「False Hearted Lover Blues」をあえて1曲目にもってきていることと対比させると、何だかニタリとしてしまう。もちろんこれもまた、私のツボにドンピシャリとはまるほど、お気に入りの曲なのだけれど。