Us And Them/Pink Floyd

3日前の朝、締切りギリギリで仕事が終わり、ほっとひと息つく間もなく、そのまま勢いに乗って自転車でフラフラと紅葉見物に出かけた。結局、その日はそれで精一杯。たまっている雑用に一切手をつける気力も体力もなく、そのまま1日が終わってしまった。
そして、一昨日から、少しずつ従来の生活に戻っていくつもりだった矢先に、ショッキングなニュースが届いたため、時間が止まってしまった。
かつてのネット仲間の訃報だった。今でこそ私のネット生活は「mixi」が主流になっているけれど、それ以前によくお世話になっていた音楽BBSの中の1つの常連さんの1人で、メール交換やBBS上でのやりとりだけでなく、直接お目にかかったこともある人だった。長い闘病生活の末に、先月亡くなられたという。
実は、直接の対面はたった1度きりなので、それほど親しい間柄だったとは言えないはずなのに、自分でも驚くほどショックの度合いは大きい。その訃報を受けて以来、まるで全身がフリーズしてしまったかのように、なかなか何も手がつけられない状態が続いている。
彼女ともっと親交の深かった方々が、私以上に動揺していることは、訃報に対して寄せられた数々のコメントからも察せられる。当然のことだろう。
Neil YoungPink Floydがお好きで、キルト作りの名人でもあり、何らかの交流のある音楽仲間には、それぞれの好みに合わせた作品を惜しげもなくプレゼントしてくれるような人だった。私までその恩恵を受けている。私のためにわざわざ作ってくださったのは、Nicky Hopkinsのアルバム・ジャケットをモチーフにした、可愛らしい作品だった。
主婦業の傍ら、興味ある分野の大学の講義も受けていたという話も聞いていた。向上心のある人だったということが、そんなことからも推し測られる。
数年前に、私生活の多忙を理由にネットから離れ、1年ほどすれば復帰すると言っていたのに、そのままになっていたので、いつしか彼女のことを話題にすることもなくなっていた。
それなのに、久しぶりに彼女の名前を口にしたのは、訃報が届くちょうど前の日のことだった。植物園で紅葉見物をしている時に、彼女が愛用していたハンドル・ネームを連想させる木を見つけ、ふと、彼女を思い出し、その近況が気になったばかりだった。ただの偶然と言ってしまえばそれまでだけれど、そんな風には思いたくない。そして、これから先、再びどこかでその木を眼にするたびに、きっと彼女のことが浮かぶに違いない。
春に、淡い色の可憐な花が咲くというその木の名前は「はなみずき」。